ア イ シ テ ル ？ II

破壊 ページ26

『わーーー！めっちゃ綺麗！！』

居酒屋を出た後
約束通りイルミネーションを見にきた

あたりは様々な光に彩られ、夜の街を明るく照らす
その光は、行き交う人々も足を止めるほど綺麗に輝いている


『ねえジンくんちゃんと見て！ほら！』


少し後ろを歩くジンくんに呼びかけると


ジ「はしゃぎ過ぎ、ガキかよ」


なんて、笑われる

だってイルミネーションなんて久しぶりだもん
高校生以来じゃない？

社会人になってからは、仕事が忙しく
ゆっくりイルミネーションを見に行く時間もなく、そう言う気も起きなかった
休みなんてほとんどなくて、家でもずっとPCとにらめっこ
たまにある貴重な休みも、1日寝て過ごす日が多かった

いわゆるブラック企業ってやつ

4年続けたけど、次の就職先もなにも決めないまま、耐えられなくなって辞めてしまった
給料はそれなりに良かったけど
自分の心身を押し殺してまで続けたくなかった

その点、今のYouTuberという仕事は
好きなこと、やりたいこと、楽しいことを存分に楽しめるし、自分のスキルも活かせている

だから、あの時マホトが拾ってくれて本当に救われた
じゃなきゃ今の私はいないしね

ただの偶然だったかもしれないけど、マホトとの再会は
私からしたら奇跡に近いものだった

今でもずっと感謝してる
仲間家解散の時、私はここに残るって言ったのに
お前も行けって背中を押してくれた
たくさん迷惑や心配をかけたのに、マホトは笑顔で送り出してくれた

その笑顔にわたしはいつも助けられてきたんだ



ジ「律」




歩きながら、物思いにふけっていると
いつの間にか隣にいたジンくんがわたしの手を握る

『どうしたの？』


ジ「前見ろ」


間違えた、握ったんじゃない、掴んだんだ

目の前には光輝く大きな木
あと一歩踏み出せば、ぶつかっていただろう

ジンくんは、ぐいっとわたしを引き寄せると

ジ「ちょっと目を離すとこれだもんな」

なんて、繋がれた手をそのままポケットにしまった



『新手のセクハラですか』



ジ「お前ほんと可愛くないな」



『嘘だよありがとう』


こんなに冷静に対応してるけど
頭の中では、相馬さん相馬さん相馬さん相馬さん、と必死に相馬さんの顔を思い出していた

ギョロッとした目、尖った顎、緑色の芝生、そして寝起きの浮腫んだ顔

鮮明に思い出された相馬さんの顔は、すぐに気持ちを落ち着かせてくれて
騒ついていた心も、平常心に戻ることができた

相馬さんパワー強いわ

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