【傭兵】もう少しだけ *薬 ページ1
"ハンターが近くにいる!"
動かないメリーゴーランドを横目に、
私は慌ててチャットを送った。
チェイスは苦手だというのに、今日は運が悪い。いつになく走り回っているのではないだろうか。
窓枠で加速し、橋を渡ってテントの中へ。
と、いうのが判断ミスだったのかもしれない。否、絶対そう。
『っ!?』
もう随分と高い音を出している暗号機前を横切ろうとした時、横から伸びた影が私の腕を掴んだ。
そのまま体が引っ張られ、勢いよくロッカーの中へ引きずり込まれる。
静かにドアが閉まると、頭上からは囁きにもとれる声が聞こえた。
「ふう、危ねえ」
『び、っくりしたな……危ねえじゃないよ、何やってるのナワーブ』
安堵のため息を漏らす傭兵に向かって、小さく口を開く。
ここが通常のロッカーよりは少し広いと言えど、一人用に二人も入るなんて馬鹿げてる。
おかげで、彼との距離はほぼゼロに等しい。
おまけに引き入れた時の勢いなのか、彼の手が腰辺りに当たっていてくすぐったい。
私の質問に、ナワーブは不服そうな声色で答えた。
「何って、チェイスが苦手なAのために助けてやったんだろ」
彼のいつもより低い声が耳元のすぐ傍で聞こえ、背筋がゾクリとする。
思わず耳を手で覆うと、
彼は少し驚いたような目で私を見た後、静かに口を開いた。
「え……お前、もしかして耳弱い?」
そう言って、私の手首を掴むナワーブの力は想像以上に強く、簡単に耳から離されてしまう。
『バカ、何すん……っ!』
途端、味わったことのないざらりとした感覚と、身の毛のよだつような水音が耳鳴りのように襲う。
痛いくらいに心臓が跳ね、ガクッと足の力が抜ける。
「……顔真っ赤」
話す彼の唇が耳にあたり、うまく頭が回らない。
『っ、何すんの……もうハンター行ったから、出て…』
身をよじらせて必死に抵抗しようとするが、彼は動こうとしない。
私が抵抗しようとした反動でナワーブのフードが脱げる。
それは今まで見たことない表情で。
いつになく、余裕のなさそうな顔だった。
「わりぃ、後もう少しだけ」
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暁郗 - リクエストでリッパー の薬お願いします……。ナワーブ君の薬&毒最高でした! (2021年5月3日 21時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
こっこ - あ“ーもう!毒最高!リクします!ノートンくん攻めジョセフさん受けの毒みたいです! (2019年10月3日 17時) (レス) id: 4adf5b306e (このIDを非表示/違反報告)
そらもち - すげえ好きです!惚れました!!更新頑張って下さい(`・ω・´) (2019年8月31日 21時) (レス) id: 35f31302c7 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶 - イソップくん最高でした(鼻血)リクエストいいですか?イソップくんとジョセフさんの毒をお願いします! (2019年8月21日 2時) (レス) id: 471dbd3b9c (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - リクエストお答えありがとうございます。ノートン君の薬が最高でした。 (2019年8月20日 21時) (レス) id: af4ea41ca3 (このIDを非表示/違反報告)
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