壊れゆく世界の中で (ページ5)

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1.出会いページ5

【佐久間side】

　滝沢くんにメンバー全員が呼び出され、皆何も言わなくても何となく察した。
　ついに、追加の女性メンバーが分かるんだと。

　最初に女性メンバーが追加になると聞かされた時から今まで、メンバーの皆はジャニーズの友人や他界隈の友人とかに連絡を取って、現状について話したみたいだ。
　でも結果は皆同じで、この時代の中で生きていくには仕方がないのだと話していたそうだ。
　メンバー内でも話し合いをしたけれど、結局はジャニーさんの作り上げたこのジャニーズ事務所を危険にさらすことは出来ないというのが結論で、女性メンバーを受け入れざるを得なかった。
　最初は動揺や怒りとか、気持ちがグチャグチャになっていたけれど、メンバーもそれぞれ状況を飲み込んでいた。

　それでも滝沢くんに呼び出された今、ピリついた空気になるのは仕方がなかった。
(いざその時がくるとなるとなぁ……)
　俺もモヤモヤというかソワソワした気持ちで、いつものようにメンバーのムードを上げることが出来なかった。

「皆集まってくれてありがとう。察しはついてると思うけど、今日は新メンバーを紹介する」
　そして滝沢くんに呼ばれると、控えめなノック音の後に会議室に一人の女性が入ってくる。
　背は小さくて、黒髪のセミロング。
　飛び抜けて美人というわけではなく、どちらかというと可愛い部類になるんじゃないかな。
　彼女も戸惑いを隠せない様子で、視線はずっと足下にあった。
「じゃあ、自己紹介して」
　滝沢くんに優しく促されると、彼女はおずおずと視線を上げて彷徨わせる。
「AAです……。ダンスとか何もかも初めてで自信がありません。皆さんにご迷惑をたくさんかけると思いますがよろしくお願いします……」
　震える声で自己紹介をすると、彼女は深々と頭を下げる。

　空気が重すぎて、きっと彼女はツラいはず。
　でもどうやってこの空気を変えていいのか分からない。
「……あ、えとよろしくね！」
　でも何言わずにはいれなくて、とりあえず笑顔で返すと彼女は少し安堵した様子で小さく息を吐いた。
　それを皮切りに、よろしくと周りから声が聞こえ始めた。
　滝沢くんも安堵した様子で、そっとCDを一枚テーブルに置く。
「これ聞いたら、彼女が選ばれた理由が分かるから」
　そう言うと、滝沢くんは部屋を出ていった。
　皆が無言でCDを見つめていると、ふっかが口を開く。