白衣の天使じゃないけれど (ページ44)

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部屋に着くとちょうどAのお父さんとお母さんが出てきたところで、軽く会話をすると気を利かせてくれたのか別室に行ってしまった。
「A、俺やけど入ってええ？」
「どーぞー」
　Aの了解をもらって部屋に入ると、純白のウェディングドレスを纏って頭にちょこんとティアラをのせたAが椅子に座ったままクルリと振り返った。
「……っ」
　あまりの可愛さというか綺麗さに、俺は思わず息を飲んだ。
「……どうかな」
　Aは照れくさそうに目を伏せると、その姿に俺の胸がさらに高鳴った。
　化粧も相まって、まるで知らん人みたいや。
　衣装選びの段階からどんなドレスを着るとかは分かってたんやけど、想像以上で緊張が増していく。
「……ホンマに綺麗やで」
「ありがと」
　にぱっと屈託のない笑顔は、どんなに着飾っても紛れもないAそのもので、思わず安堵した。

　その後、真っ白な教会で挙式が執り行われた。
　たくさんの人達に見守られながら、俺達は夫婦になることを誓った。
「ーーそれでは誓いのキスを」
　神父に促されてAの顔を覆うベールを上げた俺は、涼しい顔をしながら頭をフル回転させていた。
　人前でイチャイチャするのが苦手な俺は、果たしてキスを口にするのかほっぺにするのか。
　これは以前から悩んでいて、未だに解決してない。
　それどころか本番やっちゅうねん。
「……っ……」
　ええいままよと口付けた場所はほっぺで、シャッターチャンスとばかりにフラッシュがあちこちで焚かれた。