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「……康二くん」
「ん……？」
囁くように名前を呼ばれ、俺も思わず小声で答える。
「……ふふ、呼んだだけ」
「何やねん」
クスクス笑い始めたAをそのまま下に引っ張って俺が三角座りした股の間に座らせる。
そしてそのまま包み込むように抱きしめれば、Aが何となく下を向いたのが分かった。
これはAが恥ずかしがってる証拠。
「……私幸せだな」
「うん、俺もよ」
「今日メンバーの皆に会えたし、付き合ってるの許されてる感じがして嬉しかった」
一々人の付き合いに口を出してくる奴はおらんけど、Aは嬉しそうに微笑む。
「……愛してんで」
思わず自然と口から出てびっくりした。
愛してるなんて初めてプライベートで言ったと思う。
なんかAの笑顔見るだけで、胸が苦しくなる。
最近の俺Aが好きすぎて怖くなる。
照れながら喜ぶAは、俺の腕に頬をスリスリする。
もうこういう仕草を自然とするから恐ろしいねん。
俺のおらん所でもこんなんしてないよね？
ほら、こんなん考えたら胸がモヤモヤする。
なぁ、俺のだけのものになってよ。
こんなん言えんからそっと胸にとどめる。
「……私康二くんのものだよ」
「……は？ エスパー？」
「口に出してますが」
胸にとどめれんで無意識に口に出とったみたいで俺は手遅れと知りながら手で口を覆う。
「私はとっくに康二くんのもののつもりだったけど」
当たり前のように言ってのけるAに、俺は思わず口を開く。
「足りんのよ全然」
俺も最近自覚せざるを得なかった、ドロドロとした欲。
言ってもええんかな。
もう我慢できんよ。
「好きすぎてたまらんのよ。A結婚して……俺と結婚してよ」
「え……」
Aが驚きのあまり俺の抱擁を解いて振り返る。
大きく目を見開いた瞳に懇願した表情の俺が映る。
あぁ情けない。
でもさ、ごめんやけどこんな俺でも受け入れてよ。
だってこれが俺やもん。
「Aとずっと一緒におりたい」
今日ここで言うつもりは全く無かったのに。
本当やったらシチュエーションやら大事にしてあげたかったのに。
「私も……私も康二くんと一緒にいたい！」
ぽろぽろと涙を零すAは、俺に勢いよく飛び込んでくる。
そのまま後ろに倒れた俺の目には、涙でぼやけた星空が広がった。
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作者名：六花 | 作成日時：2022年9月21日 22時
