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「うわぁ……美味しそう」
大浴場で体を流してお楽しみの夕食。
テーブルに並べられた食事はお刺身や天ぷら、茶碗蒸しやら盛り沢山。
館内で買ったお酒と一緒にいただくことにした。
俺とAも美味しい食事に舌鼓を打ちながら、お酒もグイグイ進む。
今日の俺……強いで。
今日お酒に弱かったら最悪やったけどホンマに良かった。
食事が終わる頃にはAもいい感じにほろ酔いになって、このまま風呂に行くのも危ないから散歩がてらさっきの海に出ることにした。
「海だー！」
意外と誰もおらんで２人きりの海は静かに波の音が響く。
波の音を聞きながら、Aが砂浜に駆けていく姿をハラハラしながら見守る。
「今日来れて良かったね！」
「せやね」
満面の笑みで振り返るAがあまりにも可愛いらしくて、思わずシャッターを切る。
「向井カメラマン、今日はいい写真撮れてますか」
「もちろん。ええ被写体がおるからね」
レンズ越しにAを見つめると、Aは照れたように笑う。
Aがまた海の方を向き、俺に背中を向ける。
海を見つめるAの姿を何枚か写真に収めて、Aにそっと近寄る。
ぼんやりと海を見つめるAは、俺が後ろに立っとることに気がついてないらしく、なんか面白くない。
「わっ……！」
俺が後ろからAに抱きつくと、Aがびっくりした声を上げる。
「こ、康二くん離れないと……」
「誰もおらんよ」
俺はアイドルとかいう立場の前に、外でベタベタくっつくのが苦手。
でも、なんか今日はそうしたい気分やった。
もちろん人目が無いのもあるけど。
Aの頭に頬を寄せると、Aはすっかり大人しくなった。
「……寒ない？」
「……大丈夫」
耳元で問いかければ、Aもつられて小声になる。
夜の海はなんか自然と無言の時間を作りだすけど、決して気まずい間やなくて俺にとって癒しの時間。
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作者名：六花 | 作成日時：2022年9月21日 22時
