10.初対面その4 ページ37
俺の仕事が最近落ち着いていて、ある日Aと旅行の計画を立てた。
旅行言うても、めっちゃゆっくりはできひんのやけど、夕方出発して次の日の夕方までに帰ってくるような感じ。
それでもAは行きたいと言ってくれて、さっそく海の見える旅館を予約した。
客室はそれぞれ離れで部屋食にしてくれるところがアイドルやっとる俺にとっては魅力で、Aはその点も了承してくれた。
結局何でも我慢させてるんやないかと思ってしまうけれど、Aが毎日のように笑顔で楽しみと言ってくれるのが救いやった。
あっという間に旅行の日になって、昼まで仕事の俺をAが車で迎えに来てくれることになった。
そしてAが迎えに来た後に運転をバトンタッチして、そのまま旅館へ出発という予定。
「康二なんか今日めっちゃテンション高くない?」
楽屋で皆がわちゃわちゃしてる中、阿部ちゃんがにこやかに問いかけてきて、俺はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに阿部ちゃんに向かい合った。
「阿部ちゃん聞かない方がいいよ。こういう康二面倒だから」
「おいめめ!」
めめが意地悪な笑みを浮かべると、阿部ちゃんは気になるなぁなんてあざとく首を傾げる。
「はい、あざとい警察です! 事件の臭いを辿ってきました」
「いや犬じゃねぇんだから」
臭いますねぇなんて言いながら阿部ちゃんの周りを嗅いで回るさっくんに、ふっかさんがツッコむ。
「で、旅行にでも行くの?」
「は!? 何で知ってるん!」
ふっかさんの思わぬ発言に俺は目ん玉が落ちるんやないか言うくらい目を見開いた。
「いやぁ、この前なべと出かけたときにAちゃんが言ってたから」
「ちょい待ち。聞いてないのよ」
Aからは何も聞いてないから頭の中がパニックの俺。
そんな俺の様子が楽しいらしく、ふっかさんが腹を抱えて笑う。
「2人で出かけたらたまたま会ってさ。そんときにAちゃんが言ってた。なんか面白そうだからAちゃんに口止めしてたの。ほら、あのケーキ美味しかっただろ」
そう言われ、数日前にAが買って帰ってきたケーキを思い出す。
どうやらケーキはふっかさん達からの口止め料やったらしい。
「くそー! 美味かったわ!」
そう言うと、ふっかさんとちょっと離れた所に座るしょっぴーはゲラゲラと笑い始めた。
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作者名:六花 | 作成日時:2022年9月21日 22時