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「ふう、ご馳走様でした」
先に食べ終わっていた康二くんは、テレビのチャンネルを変えながら私が食べ終わるのを待っていた。
「……あ」
康二くんが何かに気づいたようで、私も思わずテレビの画面を見る。
「SnowManだ！」
そういえば新曲のMVを撮影したとか言ってたなと、先日の康二くんの言葉を思い出す。
新曲が数日後に出るということで、番組で短時間だけと特集が組まれているようだ。
「録画しとけばよかったなー」
流れるMVを見ながら呟くと、康二くんはそういえばと口を開く。
「Aは俺の仕事にあんまり食いつかんよな」
「あはは……」
そう、私は康二くんの仕事の面では一線を置いている。
今日はMVを撮影した、番組の収録、雑誌の撮影をしたとか色々話してくれるけど、基本的にそうなんだとだけ返しておく。
今までアイドルに興味の無かった人生だった私はアイドルが何たるものなのか理解出来ていないし、一般人の私には理解できるわけもない。
それに一線を置いていないと、聞いてはいけない内緒の情報とか知りたくなりそうで嫌なのだ。
やっぱりそこら辺の分別はつけておきたいし、アイドルというか芸能人と付き合う上での最低限のケジメだと思う。
そういう思いを掻い摘んで話すと、康二くんはニッコリと微笑んだ。
「ホント、Aと付き合えてよかった」
「え、どしたの急に」
私はアイドルモードでカッコよくキメてくる康二くんより、こうやってどストレートに思いを伝えてくる康二くんに弱い。
熱くなった頬を冷やすように、私は自分の頬をぺたぺたと触る。
流れるMVはサビを迎えたようで、今日は盛り上がりを見せる。
「うわ……さっくんすご……」
普段はうるさいと言われるさっくんは、相変わらず人を魅了するダンスを見せつけている。
「んー、やっぱりAはさっくん推しなんやね」
口を尖らせてジトッと見つめてくる康二くんに申し訳なさもあるけど、こればかりは仕方がない。
私はさっくん推しなのだ。
そうこうしているとテレビ画面が、カメラ目線で儚げな表情をした康二くんが映り、無事に死亡した。
「ひぇ……かっこいい……」
呼吸困難に陥った私はテーブルに伏せて息も絶え絶えに。
そんな私には、テーブル越しでドヤ顔をかましている康二くんの顔を見ることは出来なかった。
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作者名：六花 | 作成日時：2022年9月21日 22時
