９話 会う ページ10
その日から、オーディションとバイトと病院をぐるぐる回転するようになった。オーディションの結果は二次にも少しずつ行けるようになって、バイトも上司から気に入られて。めるとの「おはよう」「おやすみ」メールも再開。
ただ、お見舞いに行ってもめるは寝ていることが多かった。めるにはもう回復という文字はなく、どれだけ延命出来るかが重視されていたように思う。俺はめるの横でひっそりと、息を殺して泣く日々を過ごしていた。めるを見ていると、自分の命をあげたいとまで思った。
途中、めるが起きたらどうしよう。めるに元気を与えに来てるのに、また頭を撫でられたらどうしよう。心配する立場とされる立場を、入れ替える事はしてはいけない。強く思った。
ある晴れた日、オーディションを受けた足で病院に向かった。コンビニでモンブランとプリンを買い、トートバックに入れている。病院の廊下を歩きながら、めるのことを思った。
(める、起きてればイイな……)
いつもの病院なのに、笑顔が多く感じた。車椅子を押している息子と老人がイキイキして、キラキラして。俺にはそんな風に見えた。
「めるー！」
扉を開けると、優しい目をした女の人がいた。
「直人。お母さん」
「あ……、どうも」
「はじめまして」
「緊張しなくていいよ、もうお母さんにもお父さんにも話してあるの」
ふたりは、新しいニット帽を編んでいるようだった。お母さんはチューリップ柄を、めるはまだ持っていない鮮やかな緑を手に。
そして、ランプの横にはピンク色のボトルと、半分残っているバニラアイスが。ほっとする匂いが肺に入る。
「ギターひいてよ！ お母さんと私ね、スビッツが大好きなの」
「じゃあ、小さな生物は？」
「歌える歌えるー！」
異常にテンションが高いめるは、手を宙に広げた。俺がギターを出している間、扉が開いた。振り返ると、眼鏡をかけた背の高い男性が。ビニール袋の中には、妙にふくらんだ本が一冊。
「お父さん。お父さん、こちら直人」
「あ……、娘がお世話になっております」
「どうも。直人です」
優しそうな御両親だ。俺はぺこりと頭を下げる。
「そうだっ。屋上行こうよっ。いいでしょ？」
「もう、めるったら。直人君がギターを……」
「いいでしょー！」
めるはぷくぅっと頬を膨らませた。
10話 架空のデート (文字数足らなくてほぼ省略せざるえない)→←８話 愛は曲線を描きながら
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レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 架空夢想像さん» イベントに参加させてもらった者です。御高覧、ありがとうございます♪ 作品との出会いって大事ですよね(*^O^*) (2015年9月9日 20時) (
レス) id: 6298628eb9 (このIDを非表示/違反報告)
架空夢想像(プロフ) - とてもいい作品でした！この作品に出会えたことに感謝です (2015年9月9日 19時) (レス) id: d18e4db244 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 山吹草さん» 山吹草さん、ありがとうございますー！ 私もめるちゃん大好きだー！(*^^*) (2015年5月20日 11時) (レス) id: 6298628eb9 (このIDを非表示/違反報告)
山吹草(プロフ) - キャラがとてもいきいきしていて、思わず感情移入してしまいました！ 何よりめるちゃんが可愛い…♪ 最初はニコニコしながら読んでいたのですが、屋上のシーンから涙がとまらな…く… あ、あれ？また涙が…。(あ、これマジの方です。) (2015年5月20日 5時) (レス) id: e8988734ef (このIDを非表示/違反報告)
ナンシー・ハジェンズ(プロフ) - PPさん» 最後まで読んでくださってありがとうございます！ 泣くと身体に良いそうですね。俺も泣こうかな……。/めるがもし直人に会ってなかったら……と思いながらエピローグを書かせていただきました。俺は、小さな恋の歌を聞いてましたねｗ しょこたんも聞こう……ｗ (2014年9月29日 20時) (レス) id: e3161d1476 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナンシー・ハジェンズ | 作者ホームページ：https://twitter.com/seshiru777777
作成日時：2014年9月20日 20時
