◇君の嫌いな理由◆ (ページ12)

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１２. ページ12

学校に着いて亮君と空き教室に行く。

学校までの道で亮君は時々跳ねた髪を押さえてたけどやっぱりなおらなかった。

「Aいつも持ち歩いてんの？」

「ウォーターですか？」

「おん」

「いつもじゃないんですけど、今日はちょっと寝坊しちゃって」

「そうなん？」

でも…って亮君の声が聞こえて
ふわりと私の髪が揺れた。

優しく亮君が髪の毛を持って
するすると指で撫でる。

「綺麗やん」

「そう、ですか、ね」

ゆっくり目を細めて。
ゆっくり口角を上げた。

あれ？
亮君ってこんな色気あったっけ？

どくんと胸が痛くて慌てて亮君から離れた。

途端に亮君が不思議そうに私を見て
楽しそうに笑った。

「どしたん？」

「い、いえ」

聞いてない。聞いてないよ。

こんな可愛さがあるのにこんなカッコいいとか。

「あ、Aチャイム鳴るで、行こう」

「……うん」

空き教室の前で亮君と分かれて
教室に入ると大倉が凄い勢いで私を見た。

最近、大倉がおかしい。

「何よ」

「大丈夫なん？何もされてない？」

「…は？何の話？」

「錦戸先輩と空き教室入ったって
仲ええんやろ？
何もされてないやろうけど…」

「あぁ、そういうことね」

登校時間だったから見られてたんだ。

亮君が何かするわけないのに。

「大丈夫だよ、寝癖なおしてただけ」

「寝癖？」

「そ、寝癖」

「錦戸先輩が？」

「そうだよ」

「へぇ」

「何？」

「いや、かわええなぁ思うただけ」

そうだよ。
亮君は可愛いんだよ。

だけど。

「…どしたん？A」

「え？」

「顔、赤くなっとる」

「…な、何でもない」

さっきからちらつく亮君のあの顔。

色気がだだ漏れの表情。

「……ほんまに何もされてへんよね？」

すぐに大倉の顔色が変わった。

目をすぅと細めて疑うような視線。

「何もしてないよ、亮君は」

「はってなに？はって！」

「もう、大倉うるさい！」

「Aが何かしたん！？」

「してないって！」

「ほんならなんでそないな顔するん！」

「どんな顔よ」

ふっと今までの言い合いが嘘のように大倉が黙り込んだ。

少しだけ悲しそうな顔して
大倉が目を逸らした。

何、その顔。

「…恋してるみたいな顔しとるよ」

「…なっ」

「好きなん？錦戸先輩のこと」

「どうしてそうなるの」

「…やっぱ、錦戸先輩可愛いない」

そう言い終えて大倉が机に突っ伏す。
大倉って呼びかけると、嫌いって。

「大倉ってば」

「錦戸先輩もAも嫌い」