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トン、とデュースの腕が、私の腕と触れ合った。
急速に縮まる距離。
ふわりと香ってきた、とうに知ってるはずの彼の匂いと、夕日に照らされた宝石のように綺麗な瞳に目を奪われて。
いつもなら全く気にならなかったその距離感に、何故か私はひどく狼狽えた。
「あっ」
…そう呟いたのは一体どっちだっただろうか。
私だったかもしれないし、デュースだったかもしれない。
もしかしたら、二人して同時に声を漏らしたのかもしれない。
半ば私の上に重なるように置かれたデュースの腕は…当たり前だけれど、硬くてがっしりした男の子の腕だった。
一見細身だけど、意外と筋肉質なんだ、とぼんやり考えつつ、すぐに謝ろうとして彼の顔を見上げた。
「ごめん、デュース。」
…別にどうってことはない、ただ腕がぶつかっただけ。
それだけだったはずなのに。
見上げた私の視界に映ったのは、驚きと困惑の交じった表情を浮かべて、じっと私の腕を見つめるデュースの姿だった。
「……デュース?」
彼の顔を覗き込んで、もう一度彼の名を呼ぶと、デュースはハッとしたようにこちらに視線を跳ね戻した。
「…っあ、あぁ…
Aが謝ることじゃないだろう!
僕からぶつかっていったんだ…その…すまない…」
小さくなっていく声と、ぎこちなく離れていく体温。
そして、あちこちに泳ぐデュースの目。
それら全てが私を不安にさせた。
目に見えて分かる彼の気まずそうなその様子が、私の知っている彼の姿とは大きくかけ離れていたからだ。
気まずいと言えば…
私達は何度か意見が衝突して、喧嘩したことがある。
本当に些細なことでも言い合いになって…
あの日の翌日は、すごく気まずかった。
…どちらが先に謝るか。
今すぐにでも歩み寄りたいのに、そうすることが出来ないジレンマに一人胸を騒がせたものだ。
しかし…彼の感じている気まずさは、恐らくこの気まずさとは全く別のものだ。
これ以上、何も言ってはいけない。歩み寄ってはいけない。妙な緊張感が伴う、気まずさだった。
二人の間に漂った甘酸っぱい匂いには気付かないふりをした。
「……………」
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作者名:わん | 作成日時:2023年12月12日 18時