【ツイステ】監督生の体液は、魔力を増強させる性質があるらしい。【短編集】 (ページ46)

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｢失礼します。｣

｢…しまーす。｣

保健室に入ると、部屋には誰もいなかった。とりあえず私はエースを近くのベッドに座らせた。丸椅子を引っ張り出して、伸ばした足をそこに置かせ、棚の中にあった氷嚢を拝借する。中に氷と水を入れ、またエースの元へと戻り、そっと患部にあてがった。

その間、エースは珍しく黙り込み、じっとこちらの手元を観察していた。

｢…なに。｣

｢……んー、いやぁ別に？
やっぱAって、世話焼きだなと思ってさ。

将来、いいお嫁さんになりそうだなーみたいな。｣

……あっ、もしかして、今のも浮気になる？

そう言って、にっと笑うエース。
無意識に、氷嚢を握る手に力が籠った。

…人の気も、知らないで。

｢……馬鹿じゃないの。｣

私は声が震えそうになるのを堪えつつ、そう吐き捨てた。

｢…わり、気に障った？｣

そう言って、私を見つめたまま、柔らかく笑うエースの姿が、脳裏に焼き付いて離れなかった。

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図書館で、エースと出会った。

本棚に隠れた、人目のつかない奥の部屋。そこでエースは椅子に座ったまま、テーブルに上体を預け、腕を枕にして居眠りをしていた。
彼の目の前には、積み上げられた数冊の本と、筆記用具が置かれていた。

ここにいるのは珍しいと思ったが、どうやらプライベートで来た訳ではなく、授業課題の一環で利用していたらしかった。

｢……｣

ここでさっさと引き返せば良かったのに。
私の足は尚も止まらず、彼の元へと歩みを進めた。

｢…ほんとに、寝てる。｣

彼のそばまでやって来た時、小さな寝息が耳に入ってきて、思わずぼそりと呟いた。

覗き込むようにエースの顔を見た。ステンドグラス調の窓から漏れた光が、端正な顔立ちを照らしている。光の粒が赤毛の髪を金色に染め、普段から眩しいはずの彼の顔が、さらに眩しくなって見えた。

いつものいたずらっぽい笑顔や、好青年らしい爽やかな笑顔もいいが、今目の前にある無防備な寝顔は、見つめているだけでも息が止まりそうなほど、綺麗で。

｢…っ｣

私は周りに誰もいないのを確認した後、テーブルにそっと手をついた。光に照らされた白い頬に顔を近づけて。

そこに、唇を当てた。