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「えっ」
「…ん?」
放課後。
その日はエースとばったり、廊下で出会った。
噂の真偽が明らかになって以来、私は無意識に彼を避けるようになっていた。今回も、軽く挨拶を交わしてすぐその場を離れるつもりだった。
…が、そう上手くは行かなかった。
「ど、どうしたのそれ…!」
いつもと違うエースの姿を見て、私は見て見ぬふりが出来なかった。何故か彼は、壁を伝って片方の足を引きずるようにして歩いていたのだ。
私は、咄嗟に彼の元へと駆け寄った。視線を下にやれば、ソックスがずりおろされ、外に晒された彼の左足首が見えた。ジンジンと赤く腫れ上がり、もはや歩くのも辛そうだった。
怪我の様子を見て黙り込んだ私に向けて、エースはあー、と気まずそうに声を漏らした。
「いやぁ、試合中にちょっと捻っちゃってさ。
これから、保健室に向かうとこ。」
「ちょっと…?どこがちょっとなの?
まともに歩けてすらないのに!」
私はそう言って突き動かされるように、彼の隣に立って肩に手を回した。
「…!」
「ほら、腕こっちに貸して。保健室まで連れてくから。」
「……ははっ、サンキュ。
優しいな、Aは。」
エースはそう言うと、ややあって、私の肩に腕を回した。
いつもより湿った体温の高い腕が肩に触れ、ふわっと香った制汗剤のシトラスの香りに一瞬身体が強ばった。
「ふっ…なにそれ。
優しいってか、別に普通のことでしょ。」
「そう?俺だったら、怪我人だろうが何だろうが、汗まみれの人の体に触るのはかなり抵抗あるけど。」
「……それは…まぁ、エースだからってのもあるかな。」
「うわ〜今のやばっ、惚れそう。」
「……」
何気なく発したであろう彼の言葉に、私は右足を振り上げた。
ペシッという軽い音がして、隣から呻き声が上がる。
「お、おまっ…
例え照れ隠しでも、患部蹴んのはナシだって…!」
悶絶するエースを見て、少しだけ胸がすく思いになった。
「……その発言、下手したら浮気になるからね。」
「浮っ………えっまじ?」
……だからどうか、願ってもないことを言わないで。
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- 全体運: ★★★☆☆
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作者名:わん | 作成日時:2023年12月12日 18時