【ツイステ】監督生の体液は、魔力を増強させる性質があるらしい。【短編集】 (ページ44)

今日:29 hit、昨日:35 hit、合計:18,073 hit

2 ページ44

チームを救う最後の一投を放ったエースは、仲間達に囲まれていた。これ以上ないくらいの笑顔を浮かべている彼は、相変わらず格好良くて、目を奪われる。

近くの観客席にいる友人や、先輩に手を振り始めるエース。しかし、私達の存在には未だ気づいていない様だった。こっちだよ、エース！と叫ぼうとして、私は開きかけた口をそっと閉じた。

下の階の観客席から、見覚えのない顔が見える。

長い髪を一つにまとめたその子は、可愛らしいプリーツスカートに身を包む、男子校では物珍しい女子の姿だった。

懐かしいと思った。元の世界に居た時は、私だってその姿で過ごしていたのに。そう考えつつ、今では履きなれたスラックスの生地を膝の上でぎゅっと握り締めた。

上の階からなので、その顔はよく見えない。ただ、かなり小柄で可愛らしい子だということは分かった。彼女もまた、エースを見つめ、恥ずかしそうに手を振っていた。

エースを囲んでいた仲間達はエースを囃し立てながら、彼女の元へと送り出す。エースは仲間達を睨みつけながらも満更でも無い様子で彼女のいる観客席へと走っていった。

離れていく親友の背中を、私は呆然と見つめることしかできなかった。

｢エース！こっちだ！気づけ！

…はぁ…彼女さんの方へ行ってしまったか…｣

試合を見物していた生徒達が続々と体育館を出ていく中、隣でがっくりと項垂れるデュース。
私はその肩に、ぽんと手を置いて慰めた。

｢……絶対。
絶対、あとで奢らせよう！彼女を優先して、親友を後回しにした罰！｣

｢A…
あぁ、そうだな…！
せっかく活躍したのに奢らされるのは可哀想な気がするが………親友を後回しにした罪は重い！｣

デュースと二人で笑い合う、その心の内は重苦しくて、昏かった。

…私はこの時、噂は本当だったのだと初めて気付いたのだ。

デュースもチームの仲間達も、周りでざわつく観客達も…
彼女の存在を既に知っていたことに、裏切られたような気分になった。

慰めて欲しいのは、私の方だった。