【ツイステ】監督生の体液は、魔力を増強させる性質があるらしい。【短編集】 (ページ43)

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臆病者に相応しいのは。ページ43

【エー監】

"エースに彼女ができた"

そんな彼の噂を耳にした時、私は自分のことを心の内で嗤った。

もっと早く彼に想いを伝えていれば…もしかしたら…

心の奥底には、そうやってぶつくさと後悔を垂れている惨めな自分がいた。だから私は、そんな自分を嘲り、他人事の様に冷たい言葉を投げつけた。

ざまあみろ、と。

気付いた時には好きになっていた。

"恋は落ちるもの"という言葉もあるが、あながち間違いではないのかもしれない。私の心も知らぬ間に足を踏み外し、彼の元へと堕ちていたのである。
けれども、私はその想いを伝えることはなく、今に至るまでズルズルと引き摺ってきた。

親友という関係は、存外居心地が良かった。
だから、私は躊躇した。

もしも告白を拒絶されたら、彼と築いてきた関係は一瞬にして崩れ去るのではないか…

そう考えると怖くて仕方がなかった。勇気を持って1歩踏み出すよりも、安定を求めてその場で足踏みすることを選んのだ。

…私は、臆病者だ。

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床を擦るシューズの音が、広い空間に木霊する。ラインの内側で、たった一つのボールを取り合って数十人の生徒がひしめき合っている。

その中を1人の生徒が突きぬけていった。
一際目立つ赤毛の髪。
特徴的なハート型のアイメイクと、ルビー色の瞳。
よく見知ったその顔は、他でもない私の親友だった。

わぁっと観客席が騒ぎ出す。
隣に座っていたもう1人の親友も興奮した様子で席を立った。

｢いけ！！エース！！｣

デュースがそう叫ぶや否や、エースは構えたボールを投げた。ボールは綺麗な放物線を描き、リングの中へと吸い込まれていく。

ﾀﾞﾝｯとリングを通過したボールが音を立てて地面から跳ね上がると共に、試合終了を知らせるブザーが響き渡った。

歓声が、上がる。
すぐ隣で一部始終を見届けていたデュースが、私にギュッと抱きついてきた。

｢や…やったぞ！A！エース達の勝ちだ！！｣

｢…うん、やった！やったね！｣

半泣きでぎゅうぎゅうと締め付けてくる彼の背に腕を回しながら…私はエースの方を見つめていた。