【ツイステ】監督生の体液は、魔力を増強させる性質があるらしい。【短編集】 (ページ40)

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掌に収まる、ふにゅふにゅと柔らかい感触を堪能していると、耳の中のフワフワにも指を入れたい衝動に駆られた。丸く縁どられた先輩の耳の中には繊細な毛が集まっていて、見るからに気持ちよさそうだ。そっと親指を耳の前に持ってきて、中のフワフワの中に差し込み、くるくると掻き回す。ほんのりと暖かい中に触れると、元の世界で飼っていたペットのことを思い出す。あの子の手触りもこんな感じだったな、と懐かしんでいると……突然、んっ…という声が漏れてきた。

……触る許可を貰ったとはいえ、いきなり耳の中に指を入れるのはまずかったかもしれない…

｢あ、すみません先輩、痛かったですか？｣

ギョッとして先輩の耳から手を引いた刹那、その手をガシリ、と掴まれる。

｢わっ！｣

そのまま先輩に肩を押され、ぽすん、と芝生の上に沈められる。視界が反転し、薄い雲が掛かる青空とラギー先輩の顔が見えた。

ぐん、と近づいた顔は赤く上気し、しんどそうに目を細めている。形の良い唇はゆるやかな弧を描き、僅かに開いたそこから鋭い牙が見える。

何かがおかしいと察知した頃には、先輩が上から覆い被さっていた。

｢……あ、あんたねぇ……

さっきから、触り方がヤラしすぎるんスよ……｣

はあっ、と吐き出された先輩の熱い吐息が顔にかかり、背筋が粟立つ。
目の前で繰り返される荒い息遣い……それが、何を意味するかを知らないほど、私は純粋ではなかった。

｢すっ……！すすすみません！！

不愉快でしたなら、もうやめます！今すぐ消えます！｣

さすがに冗談でやっているとは思えない、先輩の豹変ぶりに身の危険を感じた私は、ポケットの中のマドルを渡してさっさとその場から逃げようと考えた。僅かに空いた芝生と先輩の隙間から、何とか這いずり出ようと試みる。

そうして、芝生に手をついて身動ぎをした瞬間、先輩は全体重をかけて私の体を圧し潰してきた。ずしり、と程よく筋肉のついた身体にのしかかられ、私は思うように動けなくなってしまった。
そうこうしている内に、先輩が私の頬を掴んだ。額に先輩の髪が触れるほど顔が近くなり、じわりと背中が汗ばむ。

｢…まだ話は終わってねぇ……｣

至近距離にまで迫った先輩は、薄群青の瞳をギラギラと光らせて、昂った表情で私を見下ろしていた。強引で余裕のないその姿は、いつもの飄々としたラギー先輩のそれとは、似ても似つかなかった。