【ツイステ】監督生の体液は、魔力を増強させる性質があるらしい。【短編集】 (ページ36)

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トレイ先輩とハグをするようになってから、先輩の要求は少しずつ、そして確実にエスカレートしていった。

手を繋いで、一緒にご飯を食べて、同じ布団で寝て……

そうやって、どう考えてもおかしい距離感のスキンシップがひとつ、またひとつと増えていき、気づけばキスをする事すら私は許容していたらしい。

"唇にだけは絶対しない"ことを免罪符に、額や目元、鼻や頬、時には、耳や首にまで、先輩が満足するまでキスを落とされてきた。

初めは明確に線引きされていたその行為も、次第にあくどいものになっていく。ここ最近は口端の、唇に触れるか触れないかの場所に執拗にキスを落とすようになった。
そうして、とろりと蕩けるような甘い瞳で見つめ、私を誘ってくるのだ。

…あくまで、自分は一線を越えない。
越えてしまいそうな、ギリギリのラインで踏みとどまって、待っている。あの歓迎会の日からそうして来たように、いつも自分は手を広げるだけで、私がやってくるのを虎視眈々と、待っている。

甘やかすだけ甘やかしておきながら、1度相手が隙を見せたら、もう後戻りなどできないよう頑丈に囲い込む。

…それが、この人のやり方だ。

面倒見のいいお兄ちゃんだと思っていたその人は、"おにいちゃん"の皮を被っただけの、なんとも"狡賢い男"なのであった。

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ふと、彼と話した記憶が蘇る。

"｢トレイ先輩ってなんだかお兄ちゃんみたいですよね。｣"

"｢…そうか？｣"

"｢……俺はそうは思わないな。
兄や姉っていうのは、弟や妹のことを思って叱ることができるものだ。｣"

"｢けど、俺は叱れない。…"叱らない"んだ。

…こんな兄、居たらたまったものじゃないさ。｣"

"｢…でもそれって、優しすぎてってことですよね？
えぇ〜私は欲しいけどなぁ、そんな優しいお兄ちゃん。｣"

"｢………ははっ、Aはそう捉えるんだな。

……そんな風に言われたら、その"優しいお兄ちゃん"はさぞ狂っちまうんだろうなぁ。

おかしくなる前に、早く離れた方がいいぞ。｣"

彼はそう言うと、困ったように眉を下げる。
優しい兄のように、ただ人の好さそうな笑顔を浮かべるだけだった。

"おにいちゃん"に、ご用心。 end