【ツイステ】監督生の体液は、魔力を増強させる性質があるらしい。【短編集】 (ページ34)

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｢……っ！

い、いいですよ。ハグくらいお易い御用です。｣

私はきっと睨みつけてそう言い放つと、トレイ先輩の方へ1歩進み出た。恥ずかしさより、本気にされなかった悔しさや腹立たしさが勝ったのだ。
先輩の広い背中に腕を回し、硬い胸板にそっと頬を寄せる。勇気を持って飛び込んでいったくせに、自分のものとは全く違う身体の作りや普段触れることの無い他人の体温を全身で感じ取り、思わず足がすくみそうになる。

先輩は、何も言わない。今どんな顔をしてるのだろう。私の想定外の行動に驚いているのだろうか。それとも……

｢……ひぅ…！｣

それまで私に抱きしめられたままだった先輩が、ゆっくりと手を動かす。
後頭部と腰に腕が回り、ぐいっと先輩の方へと抱き寄せられ、すっぽりと大きな体躯に包み込まれた。
先輩の頬が私の頭にすり寄り、後頭部に添えられた手が私の髪を撫で付ける。まるで壊れ物を扱うような優しいそれに私は頭のてっぺんから脚の先まで石のように固まり動けなくなった。カセットコンロに火をつけたようにぼんっと顔に熱が集まる。

ぎ、ぎゃぁぁぁぁああああああああ！！

と、叫び出したい衝動を無理やり押さえ込み、喉元まで出かかった悲鳴を必死に飲み込んだ。

しっかりしろA！これは先輩の疲れを癒すため！他意はないんだ！！

私はバクバクと異常な音を立てる心臓を無視して、震える手に力を込め、半ばヤケクソ気味に擦り寄っていった。

どれくらい先輩と抱擁を交わしていただろうか、いよいよ限界を迎えた私が、力なく回していた腕を離すと、先輩もぱっと私から離れていった。

先輩から離れたすぐ後は、何も話せなかったし、先輩の顔すらまともに見れなかった。

その顔をみると、ハグをしていた時のことを思いだしてしまいそうで、堪らなかった。