【ツイステ】監督生の体液は、魔力を増強させる性質があるらしい。【短編集】 (ページ29)

今日:26 hit、昨日:35 hit、合計:18,070 hit

3 ページ29

ケイト先輩が持ってきたのは、手のひらサイズのチョコケーキだった。

積み重ねられたチョコスポンジ。そこに、パリパリのチョコレートがコーティングされ、その上にはオレンジピールが乗っている。

｢さ、食べて食べて！｣

両手で頬杖をつき、早く早くと急かすケイト先輩。
私はフォークを拝借し、1口分を切り崩して口の中に入れた。

｢！！……んん〜……！｣

甘めのチョコレートと少しビターなチョコレート。2種類のチョコの味をオレンジの爽やかな香りがきゅっと引き締める。ふんわりと焼きあがったスポンジとその上にコーティングされたパリパリのチョコレート。2つの食感がクセになりそうなケーキだった。

｢す、すごく美味しいです……！｣

これ、高いケーキ屋さんに売ってるやつ……と1人で感動していると、すぐ隣でケイト先輩がくすくすと笑った。

｢でしょー？
実はこれ、うちのトレイくんがAちゃん達の為に作ったスペシャルケーキなんだ！凄いよねー！｣

ケイト先輩はそう言いつつ、私とグリムの写真を1枚撮った。

……トレイ先輩か、と最近の記憶を辿る。

1年生の私は、学年の離れた3年生と話す機会があまり無い。
ケイト先輩もそうだが、最後にトレイ先輩と話したのはもう何ヶ月も前の事だった。

彼の人柄は、よく知らない。強いて言うなら、第一印象は大人しくて、温厚そうな人、だった。私よりも彼のことを知る寮生達は皆、口を揃えて、"面倒見のいい人だ"と言う。だから、きっと落ち着いたお兄ちゃんみたいな人なんだろうと思っていた。いや、こんなにも美味しいケーキも作れてしまうのだから、お兄ちゃんというより、オカンの方が近いのかもしれない。

と、一人失礼なことを考えていると、ケイト先輩が突然キョロキョロと辺りを見回し始める。そうして、諦めたようにひとつため息をついた。

｢…まぁ、その張本人はこんな時にも部屋に籠りっきりなんだけど。2人ともこんなにいい顔してくれてるんだから、一目見に来ればいいのにね。｣