【ツイステ】監督生の体液は、魔力を増強させる性質があるらしい。【短編集】 (ページ26)

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彼女と話すのは楽しいから好きだ。この学校で唯一、魔法の使えない人間。そんな彼女が送る日々の話は、いつ聞いても僕を飽きさせない。

…けれども、ああやっぱり、物足りない。
僕への好意を何処かへ捨ててしまった彼女は、隠し味のなくなった料理みたいでなんの面白みもなく、つまらなかった。

｢…Aさん、少し…顔をお借りしてもいいですか？｣

｢……えっ!?

つ、ツラ貸せやってことですか？
私…何か先輩を怒らせるようなことしましたっけ……？｣

｢ふふ、どうでしょう？｣

｢え……ええぇ……｣

僕は彼女の手を引いて、人気のない場所に連れ込んだ。
白い肌に手を伸ばし、頬を撫でると、彼女は不思議そうに首を傾げる。僕はにっこりと笑顔を浮かべ、彼女の後頭部に手を回した。

その唇に口付けると、彼女から僅かに魔力の欠片を感じとった。魔法の使えない彼女が、魔力など手にしているはずがない。誰かの魔法を受けたか……あるいは、摂取したかのどちらかだろう。

｢…………！！｣

彼女はこれでもかと目を見開き、グイグイと強めに胸元を押して僕を引き離そうとしてくる。
あぁ…可哀想なくらい非力だ。

僕は彼女の腰に腕を回し、更に深く口付ける。その体内(なか)にある得体の知れない魔力に上書きするように、僕の魔力を注いでやった。

「ん、っ…ぅ……！！」

抵抗する力が徐々に弱まっていく。耳や頬は、林檎のように真っ赤に染まる。見開かれた目からはじわりと涙が浮かび、今にも溢れ出してしまいそうだ。

僕は、そっと彼女から離れた。
その瞬間、彼女は床の上にどさりと崩れ落ちる。表情は固まり、茫然と虚空を見つめている。ぎゅぅ、と強く胸の辺りをきつく鷲掴み、制服には皺が色濃く浮き出ていた。

｢…おかえりなさい(・・・・・・・)、Aさん。

悪い魔法に掛かっていたようですので、
僕が全部消して差し上げました。｣

僕はそう言って、
いつも通りの笑顔を浮かべた。

それを"愛"と呼ぶべきか？ end