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「ジェイド先輩、おはようございます。」
「ええ、おはようございます。」
彼女とのすれ違いざまに交わす挨拶。
……今日も、か。
いつもの笑顔を浮かべつつ、僕は密かに心の中で呟いた。
__彼女の明確な変化に、僕はすぐ気付いた。
僕の前では、あれだけ顔を赤らめ、辿々しく喋っていたというのに、それがある日を境にすっぱりと止んでしまった。
彼女の分かりやすかった好意は、隠しているというよりも消えてなくなったのだろうと直ぐに勘づいた。
……つまらない。
そう言えば、少し前にも彼女と似たような甘い雰囲気を纏った女がいたなと思い返す。
名前すら覚えていないが、僕はあの女の告白を断った。
フロイドにも話した通り、面倒くさいと思ったからだ。
ミドルスクールの頃から、誰かに好意を寄せられることはよくあった。
1度、興味本位で告白を受け入れてその相手と交際したこともあったが、待っていたのはしつこい愛情表現の要求と、束縛される日々。
だから僕は、この交際を境に色恋沙汰を疎むようになり、交際どころか、好意を抱かれることさえ、不愉快だと感じるようになった。
…それなのに、彼女は違った。
異世界からやって来たという、魔力を持たない監督生、A。僕はいつしか、彼女から向けられる好意を心地よいと感じるようになっていた。
声を掛ければ、エビのようにビクッと跳ね上がる小さな体。その目を見つめれば、じわじわと紅潮する頬。手を伸ばしてその体に触れれば、更に頬を赤くさせ、滑稽なほどに動揺する。
ミドルスクールの頃から見飽きていたはずの反応が、彼女であれば何度でも見たいと思った。
そして何よりも僕は、僕を想い苦悩に歪む、彼女の顔が好きだった。
ふとした時に酷く傷ついたような顔をして、僅かに潤む目を見る度に、得体の知れない感情が這い登り、背筋がゾクゾクとしてたまらなくなる。
ああ、でも、今の彼女は……____。
ねぇ…あの頃の貴方は、
一体どこへ行ってしまったのでしょう?
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作者名:わん | 作成日時:2023年12月12日 18時