【ツイステ】監督生の体液は、魔力を増強させる性質があるらしい。【短編集】 (ページ22)

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涙が枯れるほど泣いたあの日。
それ以降も、彼の言葉を聞いて粉砕したはずの恋心は、まだそこに残り、平然とした顔で居座っていた。
そして、あれだけ私を幸せな気分にしたそれは、いつしか呪いのようなものに変わった。

彼を見る度、胸が高鳴り、そして同時に心臓を握り潰されたように苦しくなる。

___"｢面倒だったので。｣"

彼の声を聞く度、あの日放たれたジェイド先輩の言葉が、何度も頭の中で再生されて、無意識に視界が滲む。

…私は、この厄介な心を何度も忘れようとした。何度も捨て去ろうとした。何度も殺そうとした。
でも、ひとたび目の前に彼が現れると、それはしぶとく息を吹き返すのだ。

いつまでも消えない恋心に精神をすり減らす日々。

そんな私の前に、ある1つの魔法薬が現れた。

｢……恋心を、消す…｣

欲しい物ならなんでも揃う、"Mr.Sのミステリーショップ"。その店頭に並べられていた、小さな小瓶に入った魔法薬に目が止まった。無色透明の液体が入った小瓶。その正面に巻き付けられた水色のラベルには、"恋心を消す魔法薬"と綴られている。

｢おや、君も恋で悩んでいるのかな？｣

店の奥からサムさんがやって来て、ニッと笑う。突然話しかけられ、私は慌てて小瓶を元の場所に戻した。

｢…おっと、失礼！少しデリケートな話題だったかな？ついさっきまでとある小鬼ちゃんの恋愛相談に乗っていたもので、ついうっかり君にも聞いてしまったよ。｣

サムさんはそう言うと胸に手を当て、帽子をとって頭を下げた。

｢それは、ラベルに書いてある通り、相手を恋慕する心を消してくれる魔法薬さ。使い方も手軽で、大きな副作用も無いから、恋の悩みを抱えた子達にはうってつけの商品だ。先程言った小鬼ちゃんもスッキリした顔で買っていったよ。｣

｢……そ、ですか…｣

私はストンと視線を落とし、もう一度魔法薬を見つめる。

……どうやらこれが、最後の1本らしい。

｢……｣

…買わない以外の選択肢が、あるはず無かった。

__彼への恋心を忘れられたらと、何度願ったことか。

｢……サムさん……これ、下さい。｣

私は、手放した魔法薬をもう一度、今度はしっかりとこの手に握りしめた。