【ツイステ】監督生の体液は、魔力を増強させる性質があるらしい。【短編集】 (ページ12)

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マメができては潰れてを繰り返して硬くなったエースの手が、まるで壊れ物を触れるかのように、私の手を優しく覆って包み隠した。

私のものとは違う、骨張って筋の浮き出たそこに目を離せないでいると、そんな私を尻目にエースは淡々と語り出す。

「…分かんないままの方がいいって、俺は思ってた。」

「…は…？」

「…だから俺は、気付かないふりをしてたの。
今まで、ずっと。…ほら、Aと同じ。
俺だって、マブでいれるのなら、それでいいって思ってたからさ。

……でも残念なことに、デュースも"それ"に気付いた。」

ぐい、と掴まれた手を引かれ、エースの方に体が傾いた。
もともと近かった距離がさらに縮まる。

「俺はそういうの上手いから、ここまで隠し通せたよ？

けどデュース(あいつ)は違うでしょ。
クソ真面目で曲がったことが嫌いな正直者。

上手く立ち回ったつもりでも……
肝心なAにさえバレて、このとおり。」

「……エー、ス…？」

気付いた、隠し通せた、上手く立ち回った…

その言葉の意味を理解しようとして、私はできなかった。

…否、しなかった。
本当は、考えればすぐに分かることだった。
2人に見つめられる度に、触れられる度に、心の奥底で眠る何かがざわめき、疼いていたのを私は知っていた。

けどそれは、"親友"やは"マブダチ"という純潔な関係に、何一つ相応しくないものだった。…それだけは分かっていた。

だから、それが現れる度に必死に蓋をした。
別のことを考えて、見ないふりをしてきた。

…だって…
だって、そうしなければ…

「…ねぇ、気付いてる？

Aは今、俺から目を逸らしてるよ。
今すぐ逃げ出したいって顔してる。」

どっ、と心臓が跳ねる。
………図星だった。
私は、彼の手を見るだけでもう精一杯だった。
ふと、視界の先で、すりすりと自分の熱を移すように、彼の親指が私の手の甲を撫で回していることに気付いてからは、それですら耐え難くなってしまった。

「…っ…気のせいだよ…」

いい加減にして、と怒気を孕んだ声で返せば、全く怯む様子のないエースの声が被さってくる。

「…へぇ？
じゃあ、なんでこっちを見てくれないの？

友人にこんなに顔を近づけられて、こんなわざとらしく優しく触れられてさ…もしかして、変な気でも起こした？

…まさか、そんな訳ないだろ。

____だって俺達、"マブ"だもんなぁ？」

じわり、と私の中の何かが1つ揺らいだ気がした。