【ツイステ】監督生の体液は、魔力を増強させる性質があるらしい。【短編集】 (ページ11)

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「…ねぇ、」

しばらく2人で笑ったあと、徐にエースが首を傾け、私の顔を覗き込んだ。
あの日の夕焼けと同じオレンジの光が窓から差し込み、澄んだルビーの瞳を照らす。

「…なに？」

「デュースと、何かあった？」

___ぐさり。

核心を突いた言葉に私は一瞬息が詰まった。
咄嗟に誤魔化そうとしたが、すぐに無理だと悟った。
エースはかなり鋭いところがある。きっと私達の妙な雰囲気もずっと前から感じとっていたのだろう。

「……べ、別に…何かってほどではないと思うけど、ちょっとね。」

「……」

なんとなく言うのが憚られて、尻すぼみに答える。
"あまり話したくない"、やんわりとその思いを乗せたが、先を促すように、エースは一つ瞬きをするだけだった。

私は窓の方に目をやって、渋々とあの日のことを思い出す。

「…あれは…
本当に偶然だったんだけど、デュースとたまたま腕が当たったの。…それで、謝ろうと思ってデュースの方を見たら……見たことない顔、してて。

…それで…あの日から、距離を取られてるみたいで…。
今日なんか、目も逸らされたし…

…なんでかは分からないけど。」

「…………ふーん…」

すぐ隣から、感情のない声がして思わずそちらを振り返る。
夕焼けに負けないほど赤い瞳と、至近距離で視線がかち合って、私は一瞬面食らった。

…こんなに、顔、近かったっけ。

「………俺は…分かってるよ。
デュースが何でそんなことすんのか。」

「………え……？じ、じゃあ、何で…」

グリムを撫でていた手が無意識に止まる。
答えを求めるようにエースを見つめると、エースはふっと小さく笑った。

「…何で、かなぁ。」

そして、縋るように質問する私を小馬鹿にするように、薄ら笑いを浮かべた。
夕日に照らされたその仕草が、妙に妖しく見えた。

「ふ、ふざけないでよ……私達、マブだよね？
…こんな関係、らしくない。
私に原因があるのなら教えてほしい。
デュースとずっとこのままなんて私は嫌だ。」

「……"マブ"、ね。」

エースは懐かしむように目を細めて、ため息混じりに呟いた。何か含みのある言い方に、私は強い不安を覚えた。

すり…

と、突然テーブルに置いていた手の甲の上をエースの指先が撫でていく。
その指が、私の指の1本1本の間を縫って滑り込む。
やがて、動けないでいる私の手をエースの手が軽々と覆い隠して、優しく握り込んできた。

私は、その光景に目を見張った。

まるで、あの時のデュースのように。