V ページ6
*side Aki
いまだ爆発音は止まない。
立ち上る炎で普段真っ暗な夜の街は、昼のように明るくなっていた。
部署の近くの住宅からは住民の顔が覗いている。
駐車場の端に止めた自身の車に近づくと
ロックを解除し、それに乗り込んだ。
窓越しにさっきまでいた本部が見えた。
窓は全て割れ、真っ白だった壁は黒く焦げている。
いま、まさにあの中で戦闘が起きているのだろう。
いくら命令されたとはいえ、自分もあの場に残った方が良かったのではないだろうか。野茂先輩達は無事だろうか…。
様々な不安が脳裏をよぎるが、それを振り払うようにして車のドアを力強く閉めた。
助手席に死にかけのデンジ。そして後部座席に天使とサメを座らせると、俺は運転座席に座りハンドルを固く握る。
「俺が運転する。オマエは二人に血ィ飲ませろ」
車内の引き出しから予備のナイフを取り出すと天使にヒョイと投げ渡した。
仕方ないなあ、と場違いな発言を彼はしているが華麗に聞き流し、アクセルを踏み込もうとする。
が、
ビタァ!といったような鈍い音が車内に響き渡った。同時に車内が小さく揺れる。
どうやら、何かが車にぶつかったらしい。
まずい…もう追いつかれたか?
そんなはずは…。
ハンドルは握ったまま、恐る恐る振り返る。
しかし安の定、そこには予想していた悪魔はおらず、どこかでチラッと見かけたことがあるような人物が窓に張り付いていた。
雰囲気的に人間、ではないようだ。瞳が完全に人のものではない…。
しかし制服はしっかりとここの所属のモノである。
ということはつまり…悪魔か魔人の二択だろう。
ドアを開けると、そいつは鮫を押し除けて後部座席に深く座り込んだ。
そして俺が口を開く前にベラベラと喋り出す。
「なんか偉そうな人に援軍を頼まれてきた。A。魔人。君がアキさん?」
バチッと視線が交わる。
声と顔は中性的で、男とも女とも取れた。
肩に置かれた手はひんやりとしており、まるで日陰に放置された鉄のように冷たい。
俺はこいつが何者かも、何故俺の名前を知っているのかも分からない。が、援軍と来れば恐らく先輩達からの命令で来たのだろう。
普段ならこんな大雑把なことはしないだろうが、なんでも今は緊急事態なのだ。他人を疑っている暇など俺には与えられていない。
何故悪魔をよこしたのかは分からないが、とりあえず仲間だということは理解できる。
そうとなればすぐに出発しなければ。
次こそは、とアクセルを強く踏み込んだ。
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作者名:はい | 作成日時:2020年1月12日 1時