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この最終試験で最終的に歌うことはできたものの、始めはひどく怯えていたので”少し期待はずれ”だったのだ。
Aに関しては彼女も戦場で歌い高い数値が出たものの、自信なさげで覚悟や度胸もあるように見えない。実際先ほども異常に怯えきり過呼吸寸前までいって合格不可能だろうと思っていた。だから歌った時には驚いた。けれどフレイアの覚悟を込めた歌と違い、絶望の歌声だった。彼女はヴァールを鎮圧しようと覚悟を決めて歌ったわけではなく、人生最後の歌をと絶望の気持ちで歌ったのだろう。
「飛べたぁ〜!むっちゃゴリゴリやねぇ…」
時間が立ってようやく合格した実感が湧いたフレイアは満面の笑顔で思いきり手足を広げて床に倒れ込んだ。Aはそっとカナメに視線を向けると、微笑みを返される。
夢を諦める為にやって来たというのに、まさかの合格するという事態にAは素直に喜べなかった。自分の実力で合格を勝ち取ったとは思えないからだ。
(私も運よく”飛べた”のかな…。でもそれはフレイアがいたからだ。私一人じゃ怖くて飛べなかった……それに…)
スオウの言葉がなければ飛べなかった。
―――
ハヤテはミラージュのバルキリーに近づくとそっと手で触れ、アラドに言う。
「軍隊は嫌いだ」
「俺もだよ」
「人に指図されるのも。だから好きにやらせてもらう」
「ご自由に」
「アラド隊長…!」
ハヤテの態度や発言に納得がいかないメッサーが何か言おうとするがアラドが片手を上げて制する。
「まぁいーんじゃない?堅苦しくない自由な感じなのが俺達Δ小隊でしょ。俺やチャックも好きにやらせてもらってるし」
「だが…」
スオウに言われてもメッサーはまだ納得できないという顔をする。真面目な性格のメッサーが礼儀知らずで戦場の恐怖を知らないハヤテの入隊を認めたくないのは致し方ない。しかし入隊といってもまだ候補生であり、素人のハヤテがこの先パイロットとして戦闘で使い物になれなければ意味がないのだ。
「俺は…こいつで空を飛ぶ…!」
(盛り上がってるなぁ…使い物にならなきゃ強制除隊されるっていうのに。それに自由っていっても責任は持たなきゃいけないんだからな?わかってんのかな)
スオウはすでにパイロットになった気でいるハヤテを眺めた。
「離れろ!」
女性の怒鳴り声が響く。全員が振り向くとミラージュが険しい表情で立っていた。
「私の機体に触るな!!」
ミラージュはハヤテを鋭く睨み付け、怒鳴った。
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作者名:空 | 作者ホームページ:http://id38.fm-p.jp/213/7772010/
作成日時:2016年9月13日 7時