【マクロスΔ】女神の歌 (ページ50)

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意地悪なことを言ったと思えば親切にしてくる。出会った当初ワルキューレになるという夢を熱く語るフレイアに「くだらない」「オーディションなんて落ちるに決まっている」と言い放ったが、戦場で彼女を助け、さらにラグナに行けるようにした。冷たい人なのか優しい人なのかよくわからない。

「ハヤテって変な人やね！」

フレイアは台車に荷物を乗せ、ぱっと笑った。色々考え、ハヤテは”変な人間”という結果が出たようである。
失礼な、と少し顔をしかめるハヤテにケラケラと笑うフレイアの2人をAは後方でじっと眺めていた。

―――やっぱりハヤテは優しい。

意地悪なことを言っても彼はなんだかんだ優しいのだ。ぶっきらぼうな性格だが困っている人間を放っておけない。自分にもそうだった。
ハヤテが誰かに親切にしている様子を見るとやはりこの人は優しいのだと嬉しくなる。Aが務める弁当店の先輩従業員らの中にはやる気を出さず仕事をサボるハヤテに良い印象を持たず、「彼はやめた方がいいのでは」とAを心配して言う者もいたが、ハヤテと交流し優しい所を知るうちにどんどん惹かれていった。
ハヤテが好きだ。だから彼が女の子に優しくしていると嫉妬で心が苦しくなる。

(やだな…さっきから嫉妬してばっかり…)
自分からハヤテに積極的に話しかけることも近づくこともできない。フレイアのように明るくて、笑顔が素敵な太陽のような女の子になりたい。けれど弱虫な自分はハヤテの前で自分をさらけ出せず良い子でいようとしてしまう。弱虫な自分が嫌いだ、とAは改めて思った。

　惑星ラグナの港湾都市バレッタシティの港にA、ハヤテ、フレイアが乗る輸送艦が降り立った。ラグナは海に覆われた海洋惑星で原住民はラグナ人であり、バレッタシティは豊かな海産資源に恵まれバレッタクラゲのスルメが名産品だ。沖合には都市型移民船アイランド・ジャックポットが停泊している。
3人は太陽で明るく照らされた美しい海と街を見つめていた。街中はラグナ人と観光客で賑わい、数多く並ぶ屋台ではバレッタクラゲのスルメを売る屋台の店主の声が響く。桟橋では海猫と呼ばれる上半身は猫、下半身は魚のようなシッポの生き物と観光客が戯れていた。

(賑やかな星。海が綺麗…)

賑やかな風景、賑やかな人々の声にAだけでなくフレイアも目を輝かせていた。目を閉じて耳を澄ます。

「ここがラグナ星！キラキラした音がいっぱい…」
「ハックション！」