【マクロスΔ】女神の歌 (ページ32)

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「邪魔なんだよ！」

鋭い目で背後にいる敵機を見据え、機体を90度旋回させると失速しひらひらと急降下してゆく。その間に自分の機体を追い越した相手の後ろに回りビーム機銃が発射した。これは空中戦闘機動の一つで、機体が木の葉のようにひらひらと落ちるように見える所から”木の葉落とし”と呼ばれている。
予想外の飛行方法に驚いた紫髪少年は被弾した衝撃でコクピットが揺さぶられ歯を食いしばって耐えた。その間にスオウ機はこの場を離脱して生体反応があるポイントへ急降下する。

落ち続けている少女がキャノピー越しに見えてきて、スオウは機体を横づけさせるとファイターからガウォーク形態に変形させ、握りつぶしたりしないよう絶妙な力加減で少女の上半身を機体の右手で握りしめた。

「あっぶなかったー…」

その場でホバリング(空中停止)すると安堵の息を吐く。そして少女の顔をよく見ると、あ、と声を上げた。スオウが潜入任務中”ラッキースケベ”をやってしまった相手の少女、Aだったからだ。Aの頬には涙が零れた跡がある。
また何で落ちたりしたんだ…と思っているとAの瞼がゆっくりと開いてゆく。起きたばかりで思考が働かずしばらくぼうっとしていたが、やがて自分の体が何かに掴まれて動けないことに気づく。ビルから落ちた自分がなぜこんな状況になっているのかわからず恐怖と混乱から悲鳴を上げて暴れ出した。

「やああぁぁっ！！」
「あ、ちょっと！落ち着いて！」

泣きながら両足をジタバタ動かすAにスオウは慌ててキャノピーを開けて声をかけ、顔が良く見えるようにヘルメットのシールドを開ける。

「落ち着け！大丈夫、俺だよ。シャハルシティでぶつかった！」

聞き覚えのある声にAはピタリと足を動かすのを止め顔をスオウに向ける。涙が浮かぶ瞳にスオウの顔が映り、すっかり忘れていた記憶が思い出された。
彼は自分の胸を触った……

「スケベの人…」
「スケベ！？」

Aの呼び方にスオウは少しショックを受けるが、急に鋭い目をして地上に向かって機関砲を撃ちこちらに向かってきたミサイルを撃ち落とす。先程ビルにミサイルを当てたクァドラン・レアがまたもミサイルを放ち、その何発かがスオウ機に向かってきたのである。Aは驚きと恐怖で悲鳴を上げ目を固く瞑った。さらにビーム砲を撃つなど無差別に攻撃を行い、スオウは地上に降りてAを安全な場所に降ろし避難させる気だったが今降ろすのは危険だと判断する。