【マクロスΔ】女神の歌 (ページ15)

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女将は全部お見通しなのだ、Aがワルキューレの最終オーディションを受ける為に旅行という名目で有休を取ったのを。その事を隠したのはネガティブなAはオーディションに落ちるだろうと考え言わなかったことも。それに話せば優しい従業員達は応援してくれるだろう。それがAにはプレッシャーになってしまうし不合格になって皆の応援に答えられない事になるのが嫌だった。

”お土産を持ってきて”ではなく”送ってきて”。
つまりオーディションに合格すればラグナ星に住むことになる。だから送ってくれと言ったのだ。「頑張れ」や「絶対合格できる」等ネガティブなAにプレッシャーを与えるようなことは言わず、遠回しに応援してくれる女将の気持ちに後々気づいた時Aは嬉しさで心が温かくなった。
自分には従業員とはいえ他人である自分をわかってくれて、助けてくれたり優しく見守ってくれる人がいる。そのことが嬉しかった。

そして、応援してくれているのに自分は元々受かる為に頑張ることを最初から諦めていて、諦める為にオーディションに応募したことを申し訳なく思った。

―――
『ようこそアル・シャハルへ。こちらシャハルシティへの直通バスは…』

　街頭ビジョンから観光アナウンスが流れる街中にて、サングラスをかけた緑色の緩いみつあみヘアの美女がいた。綺麗なネイルチップが付いた指先を唇に近づける。

「こちら異常なし。マキナとレイナの方はどう？」
『こちらマキマキ＆スオスオ。シャハルシティも異常なーし』

マキナとスオウはシャハルシティにあるカフェのオープンテラスにいた。パラソルの下の席に座り、マキナは飲み物が入ったグラス片手に言う。すると何かに気づき、前のめりになって視線を向けると頭部に乗っている眼鏡型デバイスがずり落ちた。

「何か気になるものあったのか？」
「あれあれ！」

マキナが指差す方向にスオウは顔を向けると新統合軍ゼントラーディ駐屯地があり、複数の戦闘ポッドが見える。あれは104式リガードというゼントラーディの標準的なワンマン戦闘ポッドだ。マキナは瞳を輝かせながら眼鏡越しにそれを見つめる。

「104式リガードちゃん…。う～ん。きゃわ！」