【マクロスΔ】女神の歌 (ページ11)

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「でもここ、ラグナ星じゃないけど」

「…え？」

フレイアの笑顔が固まる。

「アルシャハル。ラグナは30光年隣」

淡々と言われたセリフにフレイアの顔がみるみる青くなり、口元が引きつる。そして、

「え………ええええええええええええ！！！」

絶叫が倉庫内に響いた。

「やっちまったぁ～…！」
「残念。まあ諦めるんだな。ほら、食えよ」

力が抜けてへなへなと床に上半身を伏せるフレイアにハヤテはお握りを差し出す。が、受け取らずゆっくりと起き上がった。

「いんや、諦めん…。絶対ラグナに行って……ワルキューレになるかんねーっ！！！」

勢いよく立ち上がり拳を握りしめ力強く叫ぶ。Aは彼女の叫びからワルキューレになりたいという強い思いを感じた。一方ハヤテは諦めないフレイアを疑問に思い質問する。

「なんでそこまで…」
「決まっとる！」

フレイアは笑顔で言うとそばに置かれているコンテナの上に軽々と飛び乗った。そして天井にある出入り口から注ぐ地上の光に右手を伸ばす。

「ワルキューレが好きだから！歌が好きだから！」

ハヤテは立ってフレイアがいるコンテナに近づき、フレイアを不思議そうに見上げる。

「歌っとると生きとるーって感じるんよ。ルンがピッカーッてなるぐらい！」

楽しそうに語り、満面の笑顔で両手を広げた。彼女の顔を見れば心から歌が大好きだということがわかる。フレイアの前髪にあるピンク色のハートの飾りのような物が淡く光るのにAは気付き視線を向けた。
(あれってもしかして…)

「くだらない。オーディションなんて落ちるに決まってる」
「絶対落ちん！」

ハヤテは険しい顔で視線を外して厳しい声で言うと、フレイアがむっとして言い返した。Aは彼女の発言に驚く。
なぜフレイアは断言できるのだろうか。ワルキューレを目指す少女は大勢いて、大勢のライバルに勝たなければならないのに。落ちると言われた怒りでつい言い返したのかもしれないが、よく口にできるものだと思う。
(私は絶対言えない…。落ちないなんて。そもそも私は……)

「風に乗れば飛べる！そんぐらい大事なもんあなたにだってあるやろ？」
「ないよ」

力説するフレイアにハヤテを背を向けそっけなく答える。

「え？趣味とか恋人とか…」
「ない」
「は～ぁ。それで生きてて楽しいんかね？」

ズケズケと言われ、ハヤテは勢いよく振り返り苛立った顔で睨み付けた。どうやら彼の心を突き刺したようだ。