9.続 ページ10
. 「お姉さん、道に迷っちゃった、助けて」
深刻そうな声で呼べば、彼女は振り向く。彼女は一瞬驚いた顔をした後、相手を安心させる為の笑みを浮かべる。
「あら、こんな所で1人?危ないわ、どっちから来たの?」
と、彼女は僕に目線を合わせるためにしゃがむ。
幼子らしさを意識して駆け寄り、彼女に抱きつく。
「あらあら、怖かったの?」
完全に油断している隙に、そのまま首元に噛み付く。
「なっ……」
一瞬驚いた彼女は現実を理解し、抵抗し始めた。
「なに、するの……離して……‼」
僕の見た目は幼子でも、そのじつ百年近く生きてる吸血鬼だ、力はとても強い。そのくらいの抵抗じゃ意味無いぞ。そのまま吸血を続けていると彼女は抵抗をやめた。同時に、不思議な香りを感じた。気にせず続ける。
突然だった。
強い力が働いて、彼女の身体が浮いて、後方に引っ張られ僕から離れる。さしていた歯も突然抜けて、変な感触。
なにが起こった?
「──見つけたぞ、貴様が連続失血死事件の犯人か」
声のする方には、彼女を抱き抱えた全身デニムの男が。連続失血死事件?事件になっているのか。
「抵抗せず、大人しくこちらへ来い!」
「先程の浮遊は、お前がやったのか?」
「そうだが、俺の個性だが。って誰が敵と悠長に話なんかするんだよ。……?服を着ているのに、操れない……?」
服を操る?そんな能力があるのか。と考えていると彼は細い糸のようなものをこちらへ伸ばしてきた。ぐるぐる巻きにされるが、大した強度でもなく、内側から破って拘束を逃れる。
すると今度は服を帯のように伸ばして仕掛けてくる。吸血鬼の身体能力を舐めないでいただきたい。簡単に避ける。
「捕まる気は無いぞ?」
どんどん攻撃は激しくなっている。ひょっとして、こいつはヒーローってやつか?
へぇ、個性、とやらを直接見たのは初めてだが、中々非力な人間とは思えない力だ。
ほとんどの人間がこんな感じなのか?
それってもはや人間なのか?怪物と同じでは無いのか?
そんなのが大多数とかひょっとして、
「ここは魔界か?」
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作者名：メルキュール | 作成日時：2020年5月18日 18時
