「人」である基準 (ページ5)

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4.曖昧境界世界線ページ5

. とでも言うと思ったか。1人になったタイミングで抜け出した。幼子としてでは情報収集がやりづらい。僕は人の幼子ではなく、吸血鬼だ。人間の血液を主食とし、太陽や銀が苦手。といっても灰になったりはしないが。姿だって変えられる。

結局、あまり現状を知る手がかりは得られなかった……。
僕が、実は突然見知らぬ土地へ飛ばされました、と本当の事を言ったところで信じる人間の方が少ないだろう。だったら自分で調べるしかない。

外は日が昇り始めていた。咄嗟にフードを被る。当たっても死にはしないが、苦手なものは苦手だ。

とりあえず、通りかかったこの辺りに詳しそう(勘だ)な人に、ちかくにしらべものができるところはありませんか、と訊く。
勘は当たったらしく、近くに図書館があるよ、とご丁寧に簡単な地図まで貰った。
地図を頼りに辿り着き、開館まで時間があったので、陰でしばらく待って図書館に入った。陰があって良かった。

パソコンを借りる。吸血鬼だっていまどきパソコンぐらい使える。
まずは自分のいた森の近くの里の名前を調べる。が。
「ない……?」
存在していない?どういう事なのか。
次に「ヒーロー」について。こちらは検索結果の1番上に動画が出てきた。クリックする。
災害の場面だった。撮影者も慌てている中、画面に映ったのは大勢を担いでやって来た大男。
図書館のパソコンなので音声は出ないが、大男の口が「私が来た」と動いているのが分かる。これがヒーロー?
ウェブ辞典を開くと、Mt.レディの言っていた通り国家公認の仕事らしい。個性を使って敵の退治や災害救助を行う、と書いてある。
個性って何だ?個性とは使うようなものなのか?
調べてみると、
『現在世界人口の約8割の人間のもつ、なんらかの特異体質を指して言う言葉』
とある。何でも中国で発光する赤子が生まれて以降、各地で特殊な能力を持った人が発見されたんだとか。例として炎を操る人や、犬のような特徴を持つ人が挙げられていた。
にわかに信じがたい話だが……インターネットでこれだけヒットするのだから違いないのだろう。
それで、１つ分かった事がある。

ここは、僕の知っている世界ではない。

何故ここまではっきり言えるかというと、以前もこのような事があったからだ。その事はそのうち語るとして、あの森にいたら、異世界に飛ばされた。あの時はひと月……満月がまた満月に戻ったら帰れた。では今回も?

ひとまず考えを纏めたくて、人気のないコーナーの椅子に座った。