23.開幕新生活 ページ24
. 仕方ない……選択した以上仕方ない。
「名前、行ってらっしゃい‼気を付けるのよ‼」
「はい、行ってきます」
太陽が出ていようが、出掛けるしかないのだ。ベガの見送りを受けて扉を開く。
「うっ……」
明るい日の光。眩しい。フードを深く被り直す。長袖シャツに長袖ズボン。シャツの上からグレーのパーカー。手には手袋、の完全防備。
自由な校風らしく、簡単に許可が下りたのだ。
それでも日の光は容赦なく外を歩く僕を照らす。服の下でも、長時間当たると肌がひりひりする。
日が大丈夫な吸血鬼もいるらしいが、僕は苦手だ。
個体差ってやつだ。どこぞの話みたいに灰になったりはしないが、当たると痛いし眩しいし……。
やっぱり帰りたい……もとの場所に。
縮こまりながらも何とか、一際大きい建造物の前へたどり着く。ここが……。
「大きいな……」
思わず門の前で立ち止まる。太陽があるのであまり上を向けないが、気配というか、大きな建物だということは分かる。
無事たどり着いた事にほっとしながらちらほらいる人達と共にクラス分けを見る。僕だって人間の学校の仕組みぐらいなんとなく理解はしている。僕は……1-Aか。
かなり広かったが、きちんとたどり着いた。
教室の扉も大きい。
ガラッとスライド式のドアを開けると、まだ誰も居なかった。1番後ろが割り当てられていたので、席に座る。
やっぱり朝は眠い……落ち着いたからか、眠くなってきた。そのまま目を閉じた。
うるさい音で目が覚めた。
「机に足をかけるな!」
「あぁ?」
「雄英の先輩方や、机の製作者方に申し訳ないと思わないか⁉」
「思わねーよ!てめえどこ中だよ⁉端役が!」
……。威勢の良い子どもだな。もう少し静かに出来ないのか?眠いのに……。辺りはもうほとんどの子たちが席を埋めているようだ。
「あの……」
騒ぎが続く中、前から声をかけられる。
横を向くと、髪を纏めた女子生徒が、話しかけてきていた。
「わたくし、八百万 百と言います。よろしくお願いしますね」
「……A。A・ヴァイス。よろしく、モモ」
驚いたような顔をして固まる百。何かしてしまっただろうか。ひょっとして名前の発音がおかしかったか?日本語は一応習得しているが、名前だけは発音難しくてな……。と考えるも束の間、百は急に顔を輝かせた。
「はい!私もAさんと呼ばせて頂きますわ!」
なんて言っていたら、ドアの前には1人の男が。
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」
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作者名：メルキュール | 作成日時：2020年5月18日 18時
