20.変身再調整 ページ21
. おいしかった……。
とりあえず骨をどうしようか、そこは考えて無かった。思考回路弱ってたし、しょうがないな。
まあ、まとめて袋に入れてベガの目につかないところに入れておこう。そのうちどこかに捨てよう。
かなり回復したので、これからの事を考える。
まずは姿を変えよう。さっき食べたAの姿を、目を閉じて思い浮かべる。
白いショートヘア。中性的な顔立ち。細めの体。身長は今の僕より大きくて……。
ぬるま湯の中をたゆたう感覚。
目を開いて、自分の手を見る。手を握ったり開いたり、動きを確かめる。先程よりも大きく。目線も高い。
おお、やはり目線が高い方が見はらしが良くていいな。
暫く感覚を確かめる為に、ぐるぐると家の中を歩き回ったり、手を伸ばしたり。
落ちかけの夕日が沈んでそう経たないうち、ベガが帰って来た。
「ただいま〜、遅くなっちゃった、鉄分補給のサプリメント、最寄りのお店になくって遠出になったわ!A帰ったみたいね、お疲れ様!Aちゃんが貧血みたいでね、あら、どっちのことだか分かりづらいわ」
「おかえりなさい!」
聞いてるこちらが窒息する!
よし、帰ってきたからちゃんと計画の次の段階を。
「お母さん」
と言って近づくと、こちらを見たベガの動きが止まった。
なんだ?
「A……じゃない?」
「えっ……?僕は僕だよ」
「目の色が違うわ、そんな紅色はしてない……あなた、誰」
疑いの目から、警戒の目へ。
しまった‼目の色!何も考えて無かったから僕の本来の色になっているのか‼
ええと、どう言いくるめ……もう面倒だ、えいっ。
僕はベガに飛びつく。さっきより素早い動きができる。腹が減っては戦はできぬ、とはよく言ったものだ。
「うわあああ‼ 」
さすが親子、リアクションが似ている。しかし、失神しないあたり、ここのやつら、強いな。
ちょっとだけ、吸いすぎると死ぬ、用心して……。
ちょっとだけ血を吸って、噛み後を舐める。そして驚きに固まるベガを見る。
「ベガ、いいか?Aなんてやつはいなかった。そして僕が、ボクが、A・ヴァイスだ」
ベガの目が虚ろになって、膝から崩れ落ちる。
それを確認して僕は、Aの目の色を思い出す。グリーンの混ざる、海のようなクリアブルー。
そして僕はベガに言う。
「お母さん、この袋……なんで遠出したの?」
「そういえば……鉄分補給の錠剤なんて、なんでわざわざ買いに行ったのかしら……?」
計画、クリア!
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作者名：メルキュール | 作成日時：2020年5月18日 18時
