「人」である基準 (ページ19)

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18.実行不可能? ページ19

. その案を実行する上での問題は、僕とAが2人きりになる必要があること。ベガにでも見つかったら、その瞬間アウトだ。さすがに子供が食われていて黙っていない親は無い。

しかし、前に言った通り、ベガはほとんど家から離れないし、Aの方は学校に行っているので、なかなかそのような状況は訪れない。
案を思いついてから数日過ぎたが、チャンスはやって来ない。
日々必要な生活用品は、宅配サービスで送ってきてもらうらしく、ベガは全然外に出ない。買い物くらい自分で行けよ! 計画が進まないだろ!

白い髪色に白いコーディネートが多いヴァイス親子とは対照的に、部屋ごとにテーマカラーの決まったカラフルな家で、僕は黒でまとめられた部屋──最初に寝かされてた部屋だ──の一部になって寝転がっていた。
全く事態が進展しない。
空腹も増すばかりで、動くのも怠くなってきた。
もうそろそろまずい。
親子もろともぺろっと食べてしまいたいが、結局、この世界に来てからの事と同じ事を繰り返す羽目になる。

頭も回らなくなってきたな、なんてぼんやり認識していると、ドアがノックされて、
「Aちゃんお茶飲む～?」
と、ベガが声をかけてきた。ぼんやりと、はい、と返事をすると、べガはお盆を持って入ってきた。

「う……」
おもわず声を上げる。だって、入ってきたベガは、
とてもおいしそうで。
さっきまで普通に接せていたのに。今はすぐにでも飛びかかってしまいたい。お茶のグラスをのせたトレイを持つその腕も、お茶をこぼさぬようゆっくり歩くその足も、見るだけでお腹が空いてくる。

「どうしたのAちゃん、気分悪い?血の気無いわよ、熱かしら?」
なんて言って空いている方の手をこちらに伸ばしてくる。
思わずその手を掴んでしまう。駄目だ、ベガは食べちゃ……!血だけもらう?いや、ここまで空腹なら止められない、最後まで食べてしまうだろう。ここで食べたら計画が……。

こんなに空腹になったのも初めてで、ここまでの衝動も初めてで。

手を掴んだまま、動かない僕を心配してくれたのか、声をかけてくれる。
「大丈夫よ、熱が無いか額を触るだけ、痛い事は無いわ……」
そっちにとったか。
「ごめんなさい、ベガさん、気分良くないです、1人にしてもらえますか……」
「あら、風邪かしらね……どうしようもなかったら言って」
やっと捻り出した言葉に、心配そうにしながらも、ベガは手を引いて、お茶をテーブルに置いて出て行った。