「人」である基準 (ページ2)

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1.プロローグ:夜の森にてページ2

. 「おや、今日はここにいるんだね」
木々すら静まる夜の闇、突如として声が響く。

「……何か問題があるのか、フォレスタ」
返す声はあまり機嫌が良くなさそうだ。そんなことは構わず、フォレスタと呼ばれた人物は、木にもたれ、天に向けた視線を逸らさないもう1人へ近づく。
「何も問題は無いよ？ただ、こんな夜に君がここにいるのは珍しいなって思ってね、A」
フードの下の表情は読めないが瞳が怪しげに笑っているのが何となく見てとれる。

「──だって今日は満月じゃあないか。吸血鬼の君が1番食欲が湧くときじゃないか?」

雲に丁度隠された月は、確かに今日は満ちて見える夜である。

「……別に、動かない時があってもいいだろう」
あまりお腹が空いていないんだ、とAはようやく視線をフォレスタへ向けた。
「ああ、駄目って言ったんじゃない。気を害したならすまないね、……ただ声をかけただけさ」
それじゃあ、時間だから。そう言ってフォレスタは去っていった。

「なんなんだ急に……」
静かに目を閉じる。
誰かの小さな笑い声と共に、隠されていた月が姿を見せて──。