瞬きすら Ⅳ (ページ5)

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悔しくて、負けたくなくて、すこしでも私にドキッとしてほしくて。

恥ずかしさよりも先に触れたい欲が出てきて、私も辰哉くんの背中に緩く腕を回した。

「おお、意外と大胆」
「辰哉くんは全然いい抱き枕じゃないね」
「おいそれは悪口だろ」
「うん」
「コラ、」

作戦失敗。

色気も雰囲気もなんにもないこの会話。

怒った辰哉くんが私を抱き締める腕に更に力を込めて、結果私がドキッとしてしまった。

完敗だ。

「心配だなぁ」
「何が？」
「Aちゃんは純粋だからさ。悪い男に引っかからないか」
「何それ」
「んー、例えば俺みたいな？」

辰哉くんが悪い男だったとしても別にどうも思わない。

私からしたら辰哉くんが" 想いを伝えてはいけない相手 "ということのほうがよっぽど悪いことだから。

「‥‥辰哉くんが悪い男なら、世の中の大抵の男の人は極悪人だと思う」
「へえ、嬉しいこと言うね」
「それに私は平気だよ。悪い男にひっかかるほど純粋じゃないから」
「あは、それはそれで兄としては複雑よ？」

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