瞬きすら Ⅳ (ページ4)

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「なあ、」
「ん、なぁに」
「もうちょっとそっち行っていい？」
「‥‥いいよ」

これは辰哉くんのベッドなんだから許可なんて取らずに先にしたらいいのに。

律儀だなぁと笑いそうになっているとスプリングが弾む。

辰哉くんの呼吸や温度がより近くに感じられるようになった。

「頭上げて」
「へ、何で」
「いーから、ほら」

心臓が激しく鳴る。
もしかしたら、と期待したまさにその通り。

辰哉くんだって何も見えていないはずなのに、ドンピシャで私の首の後ろに腕が滑り込んできた。

「‥‥何で何も言わないの」
「んー？何が？」

とぼけた声が鼓膜を揺らす。

同時に空いていた辰哉くんの右腕が私の肩を抱き寄せて、くるりと身体を回転させた。

私のおでこに触れているのは多分、辰哉くんの胸のあたりだろう。

「ふふっ、いい抱き枕」
「ひどい」
「褒めてんのよこれでも」
「ムカつく」
「なあんで(笑)」

その余裕そうな声も、笑い声も、何もかも。

全部にムカついて、全部に苦しくなる。

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