瞬きすら Ⅳ (ページ1)

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2人きりの空間。

隙間なくきっちりと閉められたカーテンの向こう側、遠くの方で救急車の音が微かに聞こえる。

大人の真似をして駆け引きなんてしてみても、辰哉くんは顔色ひとつ変えない。

それに救われるようで、でも悔しかった。

「自分が何言ってるか分かってる？」
「‥‥‥」
「A」
「‥‥‥」
「A、」

馬鹿げた問いかけに答えられない私こそが本当に馬鹿だと思う。

沈黙に耐えかねたのか、辰哉くんが一歩、また一歩とゆっくりと私に近づいて来て、頭の上に手を置いた。

「そーいうこと、他の男の前でぜってー言うなよ」

まじで危なっかしいわ、と笑う辰哉くんの顔を、下から掬うように見上げる。

「誰にでも言うわけじゃないよ。辰哉くんだから言ったんだよ」
「‥‥なあに、怖い目にあったから寂しくなっちゃった？」
「‥‥そうかもね」
「" かも "って何だよ(笑)」

私の我が儘や嘘に気付いているのだと、その顔を見て思った。

「しょうがないな。特別に添い寝サービスしちゃいますかぁ」
「その言い方やだ」
「高いよ、俺」
「だろうね」
「やめろ、受け入れんなって」

気付いていて突き放さないのはもう、同罪だよ。

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