〇４５ ページ45
＿
｢お前の"すき"と、俺や葵の"すき"を一緒にすんなァ｣
｢どういう意味…？｣
｢俺のことがすき？それなら、俺を悲しませることすんな。お前はただ、俺を手に入れた自分がすきなだけだろ｣
｢有、剣…っ｣
｢葵は、リカのことで俺が苦しむのが辛いって。……それで、別れようって。お前にそれがどういう意味かなんて、分かんねえだろーけどォ…｣
｢…っわかん、ないわよ！｣
｢……あっそ、じゃいいや｣
｢有剣！｣
大きく息を吸う。拳を強く握る。瞳を強く閉じる。終わりにするんだ、こいつとの因縁を。これからの未来を手放さないように。
｢俺は葵以外、好きになれる気がしねえ｣
だからもう纒わり付いて、執着するのは辞めにしてほしい。そう、言ったとき、俺は不思議と笑っていた。そしてリカは、何かを察したように泣き崩れた。
背中越しに有剣、と叫ぶ声がした。それに構わず、重い扉を開ける。
｢…っ｣
倉庫内は異常な程に冷えていた。暖を取るものは何ひとつなく、薄暗くて視界が悪い。
｢葵！｣
名前を呼んでも木霊するのみで返事はない。だだっ広い倉庫内を隈無く捜す以外、方法はなさそうだった。外ではまだ、拳が交わる音がする。
一通り回るも、葵はいない。焦りと不安だけが残り、体はどんどん冷たくなるのに、変な汗ばかりかいていた。
その時だった。
｢……ぉ……ま、く…………｣
｢…葵？｣
幻聴のような、か細い声。聞き間違いかと思えたが、それは確かに俺がすきだった、あの華奢で繊細なひとの声で。ただ、場所が分からない。声がした方へ向かうも姿はない。
ふと、視界に写った、山積みのダンボール。そしてその奥の死角に白い指先が見えて、血の気が引く。
｢…葵……！！｣
その山を掻き分けて、真っ白で俯いている彼女の両頬を、掌で包む。触れた肌はまるで、息をしていないように、ただ冷たくて。
｢葵！葵！！｣
名前を呼んで、俺を見て、目を開けて、頼むから。もう俺を好きになってとか、わがまま言わねえから、なあ、葵。
そんな思いだけが溢れて、強く彼女を呼んだとき。
｢…お、…だじ……く…｣
薄く瞳を開けた葵を見て、泣きそうになった。無我夢中で抱きしめていた。俺の熱全て、彼女に注げば良いと思った。すると葵は、ふっと笑って。
｢…あ、りが……と…｣
助けてくれて、と、瞳は伏せられた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 438人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aoi(プロフ) - みさももさん» そうなのですね!!うれしいです＊甘ったるい中に、少しどろっとしたものを持っているような、そんな感じで描いていこうと思ってます！更新がんばります＊ (2019年11月20日 16時) (
レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
みさもも(プロフ) - 私の中の小田島くんのイメージにぴったりなんです！あまあまだけどやる時はやる男と言うか、、、だから大好きです！これからも愛読させていただきます！ (2019年11月19日 23時) (レス) id: 9abd401940 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みさももさん» こんばんは、コメントありがとうございます＊すっごくうれしいです！私の描く小田島くんは、少し優しすぎると言いますか、女々しいかな、なんて思いながら描いていたので、励みになりました。これからよろしくお願いします！ (2019年11月18日 21時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
みさもも(プロフ) - 初めてコメントします！私的に小田島くん小説で一番大好きです！更新ファイトです！ (2019年11月18日 21時) (レス) id: 9abd401940 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - ぱんださん» コメントありがとうございます。鳳仙の絆すばらしいですよね…！更新お待ちいただけるとうれしいです＊ (2019年11月18日 17時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aoi | 作成日時：2019年11月12日 22時
