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「葵…、お前何してんだ…っ」

「…だ、れ……?」



雨に濡れて、視界もぼやけて、何も分からない。ただ、傘を差して走ってくるその人は、その傘をすぐに私に差した。

学ラン、眼鏡、…懐かしい感覚。



「よ、う…ちゃん?」

「…行くぞ」



大きくなった掌が私の肩を抱いた。いつの間にこんな、逞しくなったの。そんなことを思いながらも、小田島くんの綺麗な掌を思い出してしまって、少し止まっていた涙が溢れかえった。

昔よく歩いた通りを、彼は進む。歩き慣れていた道筋は、私の後ろにくっ付いていた洋ちゃんと笑い合っていた道だ。そしてそのまま、見慣れた大きな家。



「…今日、親どっちもいねえから」

「…っ」

「葵、」



相変わらず、不器用な洋ちゃん。傘を私に差してくれたから、濡れてしまっている。それでも、彼はびしょ濡れな私が目立たないように、ずっと隠しながら歩いてくれた。

大きな手が頭を撫でた。そんな優しさが今は、痛いほど胸に染みる。私に優しくしてくれる、洋ちゃんの気持ちに少し、傷付いた心が解れた気がした。

そして、やっぱり涙が止まらなくなってしまう。



「……っよう、ちゃ…ごめ、」

「…どうした、葵」

「…っ、わか、んないの……わたし」

「……」

「どうし、…らいいか、っ…わかんな、」



言葉に詰まったとき。強く引き寄せられて、気付けば洋ちゃんの胸の中にいた。彼は何も発しないけれど、ただ、強く強く抱きしめてくれた。私が落ち着くまで、ずっと。

初めて、男の人の胸の中で、声を出して泣いた。それを受け止めてくれるのは、小田島くんじゃないのに、私の心の中は小田島くんでいっぱいだった。

少しずつ落ち着いて、洋ちゃんはすぐにお風呂を勧めてくれた。冷えてっから、とそれはまた不器用な言葉を並べられて、少し強引に脱衣場に入れられた。雨に濡れた体が湯船に温められて、少し眠くなってしまいそう。私が出るとすぐ、彼も短いシャワーを浴びていた。



「…落ち着いたか?」



昔と変わらない、豪華なお家。そこに、大きくなった洋ちゃんがいる。温かい珈琲を出してくれて、小田島くんもすきだったな、なんて思ってしまう私は、どうしようもない奴だ。



「…うん。ごめんなさい」

「いや、別に。たまたま見かけただけだから」

「あんな情けない姿…見つけてくれたのが、洋ちゃんでよかった」

「…」



じっと私を見つめた洋ちゃんは、相変わらず無表情だった。

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aoi(プロフ) - みさももさん» そうなのですね!!うれしいです*甘ったるい中に、少しどろっとしたものを持っているような、そんな感じで描いていこうと思ってます!更新がんばります* (2019年11月20日 16時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
みさもも(プロフ) - 私の中の小田島くんのイメージにぴったりなんです!あまあまだけどやる時はやる男と言うか、、、だから大好きです!これからも愛読させていただきます! (2019年11月19日 23時) (レス) id: 9abd401940 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みさももさん» こんばんは、コメントありがとうございます*すっごくうれしいです!私の描く小田島くんは、少し優しすぎると言いますか、女々しいかな、なんて思いながら描いていたので、励みになりました。これからよろしくお願いします! (2019年11月18日 21時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
みさもも(プロフ) - 初めてコメントします!私的に小田島くん小説で一番大好きです!更新ファイトです! (2019年11月18日 21時) (レス) id: 9abd401940 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - ぱんださん» コメントありがとうございます。鳳仙の絆すばらしいですよね…!更新お待ちいただけるとうれしいです* (2019年11月18日 17時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:aoi | 作成日時:2019年11月12日 22時

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