22 ページ22
_
さっきまで寄り添っていたしあわせの、裏側に連れてこられた気分だ。
「え…?沢村くんが…?」
小田島くんと私が鬼邪高校に襲われたと同時に、片方でも事件が起こっていたらしい。そして、それは最悪な結末を迎えてしまった。
クッションを抱えて座る小田島くんが、小さく見えた。沢村くんは、今現在も、意識不明の重体。その言葉を聞いて、思わずぞっとしてしまう。
「…小田島くん、大丈夫?」
「え?…あぁ」
「…鬼邪高校、に行くの?」
「……ん。そーだねぇ」
「……」
「…このままじゃ、終われねえよ」
「うん…」
「だいじょーぶ。無茶しねえから〜」
「…ほんとかなあ?」
思わず零れた本音を、小田島くんは軽く遇いながらも微笑む。心配すんな、と言いたいのだろう、だけどその目の奥には小さな炎が灯っていた。
許せないね、許せないよね。あれだけ団結して、助け合って、信頼していた仲間だ。そんな仲間が、完膚なきまでに叩きのめされたら、冷静でなんていられない。
だけど。喧嘩になんていかないで。怪我なんてしないで。もし小田島くんが重体になったら。そんな小心者の胸の内を、鋭い彼はすぐに察する。
「終わったら真っ先に帰ってくっから、」
「…うん」
「ちゃんとチュウもしてあげるから〜」
「なっ…そ、そんなこと」
「ええ。いらないのお?かなしーい」
「そういう、訳じゃないよ…」
「素直じゃないねえ」
「…」
「…今の俺には葵がいる。葵が悲しむようなことにはさせねえから」
守るもんがあるっていいねえ、なんて涼しい顔をして言う。ずるい、そんなの。行かないで、とか、そんなわがまま言えなくなってしまうじゃない。
葵と呼ぶようになった唇は、すでに強い意志で固められていた。
「…負けないで」
「あ?」
「沢村くんの分も、がんばって…!」
「…葵」
「……ほんとはいやだけど。行かないでほしい、けど」
「…」
「それでも、負けないで」
「むーじゅーん」
「だ、だって…!上手く言えなくて」
「うん、ありがと」
「…っ」
「いってくらあ〜」
でも今日は帰るのめんどくしゃいから葵んとこ泊まっちゃお〜、なんて呑気に言うひと。知ってるよ、本当は帰る気なんてなくて、ちゃっかりお泊まりセット持ってきてたでしょ。
小さなベッドにふたり。小田島くんに抱きしめられる。その美しい顔が目の前にあって、眠るなんてできなかった。
438人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aoi(プロフ) - みさももさん» そうなのですね!!うれしいです*甘ったるい中に、少しどろっとしたものを持っているような、そんな感じで描いていこうと思ってます!更新がんばります* (2019年11月20日 16時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
みさもも(プロフ) - 私の中の小田島くんのイメージにぴったりなんです!あまあまだけどやる時はやる男と言うか、、、だから大好きです!これからも愛読させていただきます! (2019年11月19日 23時) (レス) id: 9abd401940 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みさももさん» こんばんは、コメントありがとうございます*すっごくうれしいです!私の描く小田島くんは、少し優しすぎると言いますか、女々しいかな、なんて思いながら描いていたので、励みになりました。これからよろしくお願いします! (2019年11月18日 21時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
みさもも(プロフ) - 初めてコメントします!私的に小田島くん小説で一番大好きです!更新ファイトです! (2019年11月18日 21時) (レス) id: 9abd401940 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - ぱんださん» コメントありがとうございます。鳳仙の絆すばらしいですよね…!更新お待ちいただけるとうれしいです* (2019年11月18日 17時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aoi | 作成日時:2019年11月12日 22時