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「…つーか寝てるしぃ……」
柄にもなく緊張して、開けた扉の先には、部屋の隅で体育座りをして眠っている葵ちゃんがいた。意気込んでいたから、少し拍子抜け。
目の前に座って、顔を覗く。ずっと泣いていたんだろう、目の周りが少し赤い。そして、涙跡が残っていた。泣いて泣いて、泣き疲れて眠ってしまったのか。
「葵ちゃーん…」
小さく声を掛けるも、起きる気配はなし。それを良いことに、指で頬を撫でる。白くて、きれいな頬。穢れを知らない、触れてはいけないような、そんなものに見えた。
胸の内を晒してしまいたい。葵ちゃんにも言えないような、本音を。俺をすきになってほしい、優しく笑ってほしい、そんな想いの裏腹に。
誰からも見られないように、ずっと閉じこめておきたい。葵ちゃんていう無垢なものを、俺色に染め尽くしたい。そんなどろどろな、黒い感情が巡るときもあって。
「葵ちゃん、俺ねぇ」
葵ちゃんといると、ほっとする。落ち着く、ってこういうことなんだって思う。強い香水を纏って猫なで声で寄ってくる女の子とは違って、いつもふわって優しい香りがして、すぐ真っ赤になって、意外と素直じゃなくて、真面目で、自分に自信がないくせに根性はあって。
きらきら、してる。いつも。俺にはないものばかりで、羨ましい。
頭を撫でる。頬に触れる。唇に触れる。
「…すきだ、葵」
触れた指先を離して、そのまま唇を重ねた。
「……ん…ぉだ、…まく、ん…?」
「…葵ちゃん」
「……っ、小田島くん…!」
キスで目を覚ますって、お姫さまみたいだねぇ。
そんなことを思うと笑えてしまう。だけど飛び起きた葵ちゃんは、泣き始めた。ぽろぽろ落ちる涙が、きれい。
「葵ちゃん…?」
「お、だ…じまく…っぅ」
「おいおい、どーした〜?だいじょーうぶーぅ?」
「…ご、め…ねっ、ごめん…」
泣きながら謝る葵ちゃん。それで全て察する。
「…葵ちゃんは何も悪くねえよ」
「…っでも」
「俺こそごめん。怖い思いさせた、」
「…っ」
「…佐智雄たち、呼んでくれたって?助かった」
「…けが、は…?」
「ぜーんぜーん。俺こう見えて強いしぃ?」
「…っうそ。傷だらけ…!」
「すぅぐ怒る」
「だ、って」
「…でも俺、そんな葵ちゃんも、全部すきだよ」
驚いた表情をした。そして、その瞳は涙が止まらなくなっていた。
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aoi(プロフ) - みさももさん» そうなのですね!!うれしいです*甘ったるい中に、少しどろっとしたものを持っているような、そんな感じで描いていこうと思ってます!更新がんばります* (2019年11月20日 16時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
みさもも(プロフ) - 私の中の小田島くんのイメージにぴったりなんです!あまあまだけどやる時はやる男と言うか、、、だから大好きです!これからも愛読させていただきます! (2019年11月19日 23時) (レス) id: 9abd401940 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みさももさん» こんばんは、コメントありがとうございます*すっごくうれしいです!私の描く小田島くんは、少し優しすぎると言いますか、女々しいかな、なんて思いながら描いていたので、励みになりました。これからよろしくお願いします! (2019年11月18日 21時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
みさもも(プロフ) - 初めてコメントします!私的に小田島くん小説で一番大好きです!更新ファイトです! (2019年11月18日 21時) (レス) id: 9abd401940 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - ぱんださん» コメントありがとうございます。鳳仙の絆すばらしいですよね…!更新お待ちいただけるとうれしいです* (2019年11月18日 17時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aoi | 作成日時:2019年11月12日 22時