天才が馬鹿になった日 第七章【NARUTO】

懐かしき馬鹿　後編 ページ3

「す、すまない…その…
息子さんがおられる…と？」

「そうですな…
恥ずかしながら、
出来の悪い息子が一人。

マルタと言って、」

「？！」

椅子がひっくり返りそうになった。

マルタって…あいつか？？

「しかし…まぁ、
私も晦冥殿にお会いして
こうして働きどころを頂く前は
表を堂々と歩ける人間でも
なかったですからな。

本当、碌でもない父親で、
あまりにも息子に構うのも…」

「…いや、だが…
私のあった事があるマルタは…
盗賊をしていて…」

もし彼が言うマルタが
私が会った事のあるマルタなのであれば、
何と奇妙な縁で、そんな事滅多にある訳…

「ほぉ！！
まさか覚えておられるので？」

驚いたような顔をする総長に
私も同じような表情を返す。

「え？マジなん？あのマルタ？？」

「いや、しかしまさか、
子供時代の晦冥殿にお会いして、

それに加えて自分は既に
晦冥殿の忠臣だなんて
分不相応の事を言うもんだから、

お前は馬鹿かと叩き回してやったんだが…

ハハハ、まさか息子の言う通りなんですな！
これは悪いことをしてしまった！！」

「忠臣…」

「一時期は仁義も何もない
弱小盗賊の傘下なんぞに入って
馬鹿をやっていたと思っていたが…

まさか晦冥殿との繋がりをなぁ。」

少しは見直した、と頷く彼。

いやいや、忠臣とかそんな事は…
と私が言う前に、
あの時の事を思い出してハッとする。

いや…まさかのまさかだが…

あの時、幻術にかけたのが…未だに？

「総長…」

「…？どうされた？」

「もしできたらマルタに…
少し会わせてくれないか？」

じんわりと手に汗を握りながら
そう言う私に彼は少し嬉しそうに
瞳を光らせる。

「晦冥殿からそんなお誘いを
貰えるだなんてなんと光栄な事だ！！

それはもう、勿論！
是非とも会って頂きたい！！」

彼が一体何を
期待しているかはわからないが、

もしかすると私の所為で
息子さんが今まで、幻術から
抜け出せずにいるかもしれないのだ…

そのあまりの申し訳なさに私は
何も言うことが出来ずに微妙な笑顔で
ただただ頷いただけだった。

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