烙印 後編3 ページ23
「A様っ！」
自分の名を呼ばれたその瞬間、
ドッと安心感が私を包む。
「、」
「A様から、離れろッ！」
「ギャッ、」
カエデが振りかざした松明の炎に
奴は真っ赤な瞳を眩しそうに細めて
まるで逃げるように後ろへと
引き下がった。
途端に私の腕は自由になり、
その場で膝から崩れ落ちる。
「もう大丈夫です、
ご安心ください。」
彼はそんな私を支えると
そう耳元で囁く。
今回は何故か、
その言葉を信じれた。
「ァァアアア…カエセ、カエセ！！！」
奴は真っ赤な瞳から血を流しながら
まるで癇癪を起こした子供のように
地団駄を踏む。
その悍ましい風貌に加えて
こうしたチグハグな行動は
余計に私の中の恐怖を駆り立てる。
「…、」
しかし奴の行動を
冷徹な眼差しで一瞥したカエデ。
「貴様、契約を忘れたのか？
自身の主人に手を出すとは…
無礼者が、
すぐ様此処から立ち去れ。」
「ア、アァ…ヤクソク…ア…ァ。」
その言葉に反応を示して
ブルリと一瞬震えたが
それでも名残惜しそうに私を見ながら
その場に奴は止まっていた。
「…はぁ、
やはり私の言う事は聞かないと…」
カエデはそう言葉を吐き出すと印を結んだ。
松明の炎を自らの火遁で
更に大きくしたのだ、
カッとまるで閃光が走るように
辺りは光で満ちる。
「ギャアアア？！！」
途端に奴の体から
シュウウウと煙が立ち上がった。
「アァ…イタ、イ…イタ、」
悶え苦しみ、転げ回る。
「早々に立ち去るといい、
晦冥様に見放されたくなければな。」
「アァ…ア。」
とうとう耐えかねたとばかりに
闇に溶け込むように消えていった。
「…、」
私は死の感覚が去った事を悟り
ドッと襲ってきた疲れから
彼の腕の中から離れて
背中を壁にもたれかかさせる。
「…A様？」
「…今度こそ…死ぬかと…思った。」
「間に合ったようで…良かったです。」
「…、」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 54人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「トリップ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おぼろん(プロフ) - MAREさん» コメントありがとうございます！続編来ました！週末投稿でペースはいつもよりは遅いのですが、これからも続けていきます！ (2021年6月23日 17時) (
レス) id: fd0f1f35b3 (このIDを非表示/違反報告)
MARE(プロフ) - 何時の間にか続編が出ていた、、、、おめでとう御座います！！ (2021年6月23日 16時) (レス) id: 7446762651 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おぼろん | 作成日時：2021年6月19日 15時
