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赤い瞳 前編2 ページ42

ドシンとその直後。

猪は力尽きたのか地面に
その巨体を横たわらせた。

それを見届けた柱間くんは
歯を食いしばりながら言う。

「すまない、俺の所為で…」

「はぁ?何辛気臭い事言ってんだよ!
こんなの何ともねぇよ!

なんか気持ち悪いだろうが!」

「き、気持ち悪い…
そ、そうか…俺、気持ち悪いのか…
そうだよな…」

負傷したマダラくんを背に抱えようと
少し落ち込んだ様子の柱間くんが
しゃが見込む。

「だって俺って、
迷惑かけてばっかりだし…」

「あー、もう、面倒くせぇ!!」

その二人の和ましい空気に入り込む、黒い影。

「ぁ…」

一度、
去ったと思えたその猪が
最後に力を振り絞りながら、
彼らにその足を振り上げていたのだ。

それに気づいていない様子の二人、
このままでは二人が確実に…

「、」

喉の奥でヒュと小さな音が
聞こえたかと思えば私の脳内
アドレナリンがドバドバと出る感覚を感じた。

そして…

懐から取り出した護身用の包丁を構え、
彼らと猪の間に無謀にも突っ込んだのだ。

こんな刃物じゃあどうにもならないと
わかっていながらも…だ。

確実に「痛い」だけじゃあ済まない。

あまりにも巨大な恐怖が
眼前に迫るその瞬間…

またもう一度その世界が見えた。

「っ、」

視界にあの血管なようなものが
浮かび上がったのだ。

それも今度は猪だけではなく、
生きとし生ける者全てにだ。

血管の中の血流にも見えたし、
まるでキラキラと川を流れ、
輝く水流のようにも見える。

「…、」

私にはこの変化が
何かのヒントのように思えた。

それこそ、暗闇の中に
差し込む一筋の光のように。

(…此処だっ!)

私はその研ぎ澄まされた感覚から、
中でも特に流れが集中した部分に
勢いよく刃を突き立てた。

ズブリと身を割く感触が手を伝い、
そして飛び散る真っ赤な血液が
私に降り注ぐ。

「「Aっ」」
私を心配する声が後ろから聞こえた。

しかし、私の頭はこの二人を脅威から
遠ざける事で一杯だった。

「早く離れてっ!!」

そんな私の大声を掻き消すほどの
雄叫びをあげて猪は痛みに悶える。

刹那、私の胸元に
とんでもない衝撃が走る。

「グハッ…」

蹄はどうやら当たったらしいとは
頭の片隅に思ったのだが…

たったこの一撃で世界が
真っ暗に暗転した私には
それを確かめる術を持たなかった。

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作者名:おぼろん | 作成日時:2021年5月4日 16時

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