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伝えたい言葉 前編 ページ20

「Aさん、

…愛してます。」

私は結界の中から手を伸ばした。

指から焼けるような痛みを感じたが
そんな事など構わない。

「的場ッ!!!」

私の叫び声にも近い声に返ってきたのは
どちゃりと、何か重いものに潰されるそんな音。

あまりにも突然の出来事で
周りにいた夏目君や降嗣さんですら
その存在を止められなかった。

いや、違う。

私は倒れている二人を
自分の視界に捉える。

助けにすらいけなかったのだ…

「〜ッ、」

ニタニタと気色の悪い笑みを
絶望する私に向ける奴。

あの時の私への復讐を今、
してやったと言わんばかりだ。

…、

ピタリと私の時が止まる。

「あぁ…あ…アァ…」

体が異形の「何か」へと
変形する感覚を感じた。

その絶大すぎる「存在」に
耐えかねた結界はバチバチィと
光を放ちながら跡形もなく消え去る。

「怒り」

なんて色鮮やかな感覚なのだろうか…

そしてなんて、
苦しい「呪い」なのだろうか…

(許さない…許さない…

呪ってやる。)

思いっきりその黒い塊へと
その爆発した感情を向けた。

次の瞬間、
辺りが一瞬で真っ黒に染まり
無数の赤い目がその怪物へと
一斉に向けられる。

いや、はたから見たら…
今のこの私の姿の方が化け物か。

「ギャアアアア!!?」

メキメキと私の重圧に潰されていく
その存在。

「ギ…ぁ…ガァ…」

痛みから悲痛な叫び声を上げるが、
私は微塵たりともその声に耳を貸さない。

当たり前だ、当然の摂理だ。

強者が弱者を踏み潰す、
私が強者、そしてお前は弱者だ。

「殺シテ…ヤル…」

この世のものとは思えない声が
私から出た。

力を強めていくと、
バキバキと普通ではあり得ない音が
そいつの体のありとあらゆる部分からした。

「ァ…」

もうその怪物は声をあげる事もせず
ぴくりとも動かない。

…でもまだまだ足りない。

もっとだ、もっと。

足りないのだ。

「何か」が…足りない。



「母上ッ!」



もしこの時、
彼の声が聞こえていなかったら…

きっと私はこのままその感情に身を任せ、
自分を見失っていたのだろう。

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おぼろん(プロフ) - あまねさん» あまねさん、ありがとうございます〜(*^▽^*)長らくお待たせしてしまい申し訳ございません…それでも読んでくれる方がいてくれる事に作者、おぼろん感謝感激ですッ!!! (2021年11月2日 10時) (レス) id: 05589eb251 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 完結おめでとう〜、、、ございます(無理矢理感半端ない敬語) (2021年11月1日 23時) (レス) @page35 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
おぼろん(プロフ) - あまねさん» あまねさんコメントありがとうございます!内容が濃いだなんて…嬉しいです!ありがとうございます!色々と思考を凝らした甲斐がありました!(*^^*)更新これからも頑張ります! (2021年8月15日 17時) (レス) id: 3562684528 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 1話1話の内容が読み応え(濃くて)があって、読んでいると時間を忘れる作品でした!更新頑張ってください(ケラッ (2021年8月14日 0時) (レス) id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
おぼろん(プロフ) - えりなさん» えりなさんコメントありがとうございます!最近こっちのお話は全然浮上出来てないので申し訳ないです…もっと更新できるように頑張りますね! (2021年7月24日 6時) (レス) id: cc1232a354 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おぼろん | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2021年6月5日 22時

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