これは前世の報いなんですか？第五章【夏目友人帳】

蜜を啜れに者達　後編 ページ12

「…えぇ、気づいてたわよ。

御宿家がどうやって
彼の呪いから逃れようとしていたか。」

「なら何故、貴方の家は
同じ事をしなかったのです？

同じようにお狐様と呼び、
呪いを逸らしてもよかったんじゃありません？」

「あんなのただの気休めと
いうことを理解しているからよ。

する訳がないじゃない。」

「よくおわかりで。」

「ふん、馬鹿にしないで、
降嗣家は降霊術を生業としていたのよ？

当然、降霊術をするには
その存在を縛り為していく名が
必要になってくる。

それを知っていながら名を捻じ曲げるなんて
悍ましい事する訳がないじゃない。」

彼女はそう言うと座り直して
私達に向き直る。

「それで…具体的には、
どうするつもりなのよ。」

「禁術を…使います。」

そう私が言った途端に、
ぴしりと一瞬固まった彼女。

「はぁあああ…」

しかし大きなため息と共に頷くと了承した。

「ここまでわざわざ包み隠さず
話したって事は
私にも何かさせたいのでしょう？

良いわよ。
もうどうしようもないわ。

私達、降嗣家は既に
後にも先にも退けないもの。」

別に彼女に禁術の片棒を
担がせるつもりはない、
失敗したらどうなるかもわからないのだ。

死ぬなんて事もあるかもしれないのだ、
そんな事に巻き込むつもりは毛頭ない。

「いえ、私はただ報告のつもりで…」

「Aさん、
貴方はいつも優しすぎるんです…
人にも、妖にも…

すると言っているのですから
此処は彼女のお言葉に甘えさせて
貰っても良いんじゃないですか？

これに詳細を載せているので、
読んで置いてください。」

彼は懐から一枚の封筒を取り出すと
机の上にそれを置く。

「…。」
こうして万全に用意してきたあたり、
確実に彼女の意思関係なく
巻き込むつもりだったのだろう。

「貴方の叔父である
御宿傑の名を私達に貸して頂き、
それで禁術を発動させる。

決行は…そうですね、
一番空気が澄んでおり、
神聖な時間帯でもある
早朝にでもしましょうか。」

薄ら笑みを浮かべる的場。

「禁忌に触れるその時は、
空気が神聖であればある程
尚良いですからね。

場所は…」

彼はそのまま私の方へと顔を向ける。

「Aさん、
貴方の母親と山神様が初めて
出会ったとされるあの思い出の楠木で。」

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