ピッタリの役割 後編 ページ28
「「…。」」
まさかの人からのダメ出しに
私とアキトは目を丸める。
「疑うならば、
前までの傾向図を見てみろ。」
彼のその言葉のとおりにアキトは
数枚の過去の書類を引っ張り出す。
「本当だ。た、たしかに。」
そして汗を一筋垂らしながら、
驚嘆したかの様にそう呟いた。
「お前、よく知ってるな。」
「ふん、知っていて当然だ。」
「いや、当然じゃないだろ。」
驚くほどに詳しい彼は只者じゃない。
金に関してかなり貪欲な印象だったが、
それもきっと彼の知識量に関係しているのだろう。
私がそんなことを考えていると
目の前にいるアキトがデータを見ながら
一つのある企業名を指さす。
「では…この企業はどうですか？」
「悪くない判断だ。」
そう言って反応したのは角都。
「ほ、本当ですか！」
少し頬を赤らめて角都の言葉に
嬉しそうな表情をするアキト。
「此処もいいんじゃないですか？
角都さんの意見が聞きたいです！」
「あぁ、それも今は
良い傾向にあるだろうな。」
「ですよね！」
さっきまでの険悪な雰囲気は一体どうしたのかと思える程に彼らは二人、
私そっちのけでお金の話をし始める。
「…。」
そんな二人をただただ黙って見守る事にする、しかしまさかアキトがこんなにも詳しいのが驚きだった。
(一度くらいは任せたことはあるけど…それだけだぞ？？)
それだけの体験だけで知らぬ間にかなりの知識を蓄えていたわけだ。
それも私よりずっと多くの知識を…
彼の成長ぶりには目を見張る物があった。
私の教え子としての彼は体力的にはカイトに劣っていたものの、勉強面では兄を抜きん出ていた。
彼の能力を最も発揮出来るであろう仕事をしてもらうしかないだろう。
(よし…決めた！)
発展途上のこの病院はかなり膨大な金銭が動く、だからこそ一人では到底手に負えるものではない。
しかしこの二人であれば…
こうして生き生きと
話している様子を見て確信した。
「角都、
お前にはお金の管理を任せようと思う。
言うけど、かなり大変な仕事だからな。
アキト、お前も角都と共に一緒に尽力してくれ。」
「…。」
私の決断に目を少しばかり見開く角都。
彼が言おうとしている事はわかる
他人に…それも数日も働いていない人間に
全ての事業に直結する金銭面を任せるなど、
戯言にも程がある、と。
「俺はお前たちを…
信頼、しているからな。」
彼の疑問に私は
そう一言強調する様に返した。
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