夜道歩きはほどほどに 中編 ページ3
まさか泊まる宿すらも決まっていたとは…
なんとも恐ろしい奴らだ。
「…。」
というか昼寝したから…全然眠れねぇんだけど…
横の布団のアキトはスースーと
気持ちよさそうに眠ってしまっていた。
さっきまであれはこれと
イズナとの観光話を咲かせていたというのに…
こういう時こそ無理矢理に眠ろうとしても悪化させるだけと知っている私。
(気分転換に…行くか。)
音を立てないように布団を畳むと、
窓を開けてそっとそこから忍び出した。
幸いアキトは一切起きる気配がない。
どうやらイズナの観光ツアーは楽しかったようだが、それと同時にかなり体力を消耗するものらしい…
ヒョイっと最も簡単に抜け出した私、
早速夜の街を散策しに行く事にする。
他の道はほとんど
人はいないからと此処まで来てみたが…
「思ったよりも…人は少ないな…」
昼間、この通りでは夜の店っぽいものをいくつも見かけたこともあって
もっと多く居るものだと思い込んでいた。
しかし流石に夜の繁華街だ、
それでもかなり賑わいがある。
酔っ払い、店の呼び込み、喧嘩の声など
様々な人間模様が見れる。
(人間観察も…悪くないな…)
「ヨォ、兄ちゃん！
よって来ない？？良い子沢山いるよ！」
「いや、いい。遠慮する。」
つい、あまりにも素っ気ない風に返してしまった。
「そう？」
怪訝な表情をしたその人は突然ハッとすると、私の耳元でこそっと小声でいう。
「もしかして…そっち系かな？
大丈夫、大丈夫、
うちはソッチも大歓迎だよ！」
「は？いや、んな訳…」
「なんだったら兄ちゃん、
かなり顔が良いから俺が相手しても、」
ぽっと顔を赤くしたその男。
「…、」
その男、かなりガタイがいい事もあり、
私は毛が逆立つ気分と共にさらに身を強張らせた。
「しっ、失礼する！」
すぐさま立ち上がって
そそくさと去ろうとする。
ヤバい奴だ、これは。
「そんなに恥ずかしがらなくても。」
しかし彼も早々に逃してくれない。
「此処がどんな場所か
わかって来たんだろう？
気はあるんじゃないか？」
そう言って周りの店の看板を指差す、
そこには「陰間茶屋」の文字。
「え？」
(いやいやいや！
そんな看板見てないんだけど？？？)
昼間には確かにそんな看板はなかった筈だ。
つまりはここは夜になると昼間とはまるっきり姿を変えるタイプの街道…
…、あまり慣れない場所を
一人で歩くもんじゃない。
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